リターゲティング広告とは、一度あるウェブサイトを訪れたことがあるユーザーに対し、再度広告を配信するマーケティング手法である。この手法は、ユーザーとの継続的な関係構築や、商品の購入・サービスの利用といったコンバージョン促進を主な目的としている。
多くの企業にとって、自社の商品やサービスに興味を持ちながらも、何らかの理由でサイトを離脱してしまったユーザーを逃すことは大きな機会損失となる。一度サイトを訪問した経験のあるユーザーは、新規ユーザーに比べて既に一定の関心度を持っているため、購買や問い合わせといった行動につながりやすいという特徴があり、「見込み客」と呼ばれる。見込み客に対して狙いを定め、リターゲティングした広告を効果的に運用することで、関連性の高いメッセージを再度届けることが可能となり、コンバージョンへと導ける確率は格段に高まる。
リターゲティング広告の仕組み
リターゲティング広告の仕組みには、主にウェブサイトに設置された「Cookie(クッキー)」という技術が利用されている。Cookieは、ユーザーがサイトを訪問するとブラウザに保存される識別情報のことを指す。Google広告・Yahoo!広告など特定の広告プラットフォームが、収集されたCookieに基づいてユーザーが閲覧する別のウェブサイトやアプリ上で関連性の高い広告を後日再表示し、行動を喚起するのがリターゲティング広告表示の流れと仕組みである。
リターゲティング広告のメリット
リターゲティング広告のメリットは多岐にわたる。リスティング広告やディスプレイ広告と比較して、既に自社サービスに関心を示しているユーザーに限定してアプローチできるため、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)が高くなる傾向がある。これにより、広告費に対する費用対効果(ROI:Return On Investment)に優れる施策として、多くの企業が導入している。
リターゲティング広告の種類
リターゲティング広告には、大きく分けて次の四種類が存在する。
- サイトリターゲティング広告:最も一般的なタイプで、ウェブサイトの訪問履歴に基づいて広告を配信する。
- 検索広告向けリターゲティング(RLSA:Remarketing Lists for Search Ads):Google検索などにおいて、過去にサイトを訪問したユーザーが特定のキーワードを検索した際に、特別な広告文や入札単価で広告を表示する手法である。
- 動画リターゲティング広告:YouTubeなどの動画コンテンツを視聴したユーザーに対し、関連する広告を配信する。
- 顧客リストリターゲティング:企業が保有する顧客リスト(メールアドレスなど)を広告プラットフォームにアップロードし、その顧客に対し広告を配信する手法。
Cookie規制と今後の対策
しかし、近年、ユーザーのプライバシー保護の観点から進むCookie規制により、リターゲティング広告を取り巻く環境にも変化が生じている。既にAppleが提供するSafariブラウザでは、ITP(Intelligent Tracking Prevention)によりサードパーティCookieを利用したリターゲティング広告の表示を制限。Googleは、ChromeブラウザにおけるサードパーティCookieを2025年前半までに完全廃止する予定だったが、2024年7月に方針を撤回。新たなプライバシーコントロール機能を開発・追加することでユーザーに新しいアプローチを促す方針を示している。
こうした動きにより、Cookieに依存した従来型のリターゲティング広告の手法は大きな転換期を迎えている。今後は、次のような代替策や新たな技術への対応が求められる。
- ファーストパーティCookieの活用:自社サイトが発行するCookieを利用した計測・ターゲティング
- サーバーサイドトラッキング:ユーザーのブラウザではなく、サーバー側でデータを収集・処理する手法
- プライバシーサンドボックス:Googleが提唱する、ユーザーのプライバシーを保護しながらターゲティング広告を可能にする新たな技術群
- 同意管理プラットフォーム(CMP)の導入:ユーザーからのCookie利用同意を適切に取得・管理する
- オフラインデータとの連携:店舗など、オフラインでの活動で収集したデータとオンラインデータを連携させ、より包括的な顧客理解に基づくターゲティングを実施する
リターゲティング広告は、変化するデジタルマーケティング環境の中でその形を変えながらも、今後も重要な役割を担い続ける存在だといえる。最新の動向を注視し、適切な対応を講じることが、効果的な広告運用には不可欠である。
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