AIクラウドを打ち出す「HPE Discover 2023」
2023年6月20日~22日に開催されたHewlett Packard Enterprise(ヒューレット・パッカード エンタープライズ/HPE)の年次イベント「HPE Discover 2023」。場所は例年通りアメリカ・ラスベガスで、約1万2,000人が参加しました。
基調講演のステージに立った同社のCEO Antonio Neri氏が、「HPEはAIクラウドに参入する」と述べた上で満を持して発表したのは、「HPE GreenLake for LLMs」。LLMとは、「Large Language Model(大規模言語モデル)」の略で、生成AIに欠かせない技術です。HPEは「HPE GreenLake」ブランドでサービス戦略を展開しており、「HPE GreenLake for LLMs」は生成AI用途に適したサービスとなります。
現在の生成AIブームは、2022年11月にOpenAIによって公開された「ChatGPT」に端を発しますが、同社内に「AIに向かう」というトレンドは以前からありました。処理側の能力を提供するHPEは、巨大な処理能力が必要になると見越して2019年にスーパーコンピュータ(スパコン)のCray Inc.(以下、Cray)を買収しています。なお、HPEのCrayチームとアメリカ・オークリッジ国立研究所が共同開発したスパコン「Frontier」は、1秒間に100京回の計算能力を示すエクサフロップス級のスコアをたたき出し、性能ランキングTOP500で連続1位を獲得しています。
「HPE GreenLake for LLMs」は、そのCrayのXDコンピュータ(Cray XD)にクラウド経由でアクセスし、モデルのトレーニング、チューニング、推論などができます。ドイツのAleph Alpha社による事前トレーニング済みLLM「Luminous」へのアクセスも含みます。
巨大な処理を必要とするAIは、電力消費が大きいとして持続性や環境の面で問題視されています。そこで「HPE GreenLake for LLMs」は、ほぼすべての電力に再生可能エネルギーを使用するコロケーション(サーバーや回線接続装置を管理・保守する場)を利用するとのこと。設計段階からサステナビリティを組み込んだ点は、サーキュラーエコノミーを支援する同社のビジョンに沿ったものといえます。
今回のイベントは、HPEが「AIクラウド」という新しい市場に向けて、一気に体制を整えてきたと感じたイベントでした。