消費者が企業よりもデジタルに詳しい時代 レビュー、Q&Aで生の声に耳を傾ける
ブランド・メーカーが直販型ECに取り組む上で、認識すべき課題として山崎氏が挙げたのは「カスタマーサポート」と「消費者に学ぶこと」のふたつだ。山崎氏は、商品に不具合などが生じた際のサポート体制を例に説明を進める。
「日々消費者と接するリテール企業は、対応に慣れており消費者へ親切に対応する傾向がありますが、ブランド・メーカーはこれまで直接消費者と接する機会が少なく、サポート体制・ハンディキャップを理解する経験値不足がサービス品質に大きく影響しています。解決策としては消費者理解を深めるためにカスタマーサポートを充実させ、できるかぎり生の声に耳を傾けることです」(山崎氏)
とくにデジタルネイティブなZ世代の消費者は、ECを含めたITの利活用に関して、ブランド・メーカーより深い知識を持つことも多い。これからの時代は、ブランド・メーカーが一方的に商品・サービスを提供するのではなく、彼らから謙虚に学ぶ姿勢も重要となる。山崎氏は「それがCX向上への取り組みの第一歩となる」と続ける。
いずれにせよ、これからのブランド・メーカーに欠かせないのが「消費者とのコミュニケーション」だ。その手段として有効なのが、「レビュー」と「Q&A」だと山崎氏は言う。すでにレビューを取り入れているECサイトも多く存在し、「レビューがある商品は、ない商品よりも270%購入確率が高まる」という海外の調査データもあるほどだ。
たとえば洋服のサイズ感などは、自分と体型が近い人による「Mサイズはやや大きめ」といったレビューがあれば、よりリアルなイメージを持ちやすい。購入検討中の消費者にとって有用であるのはもちろんながら、ブランド・メーカーにとっても消費者の生の声を得る貴重な機会となる。
レビューには消費者の本音が表れるため、ネガティブな内容が書き込まれることもある。しかし、ブランド・メーカーはそれらも含めてCX向上のために有益な情報であることを理解し、「恐れず、隠さずに受け入れること」が重要だと山崎氏は指摘する。
続いて山崎氏は、「レビューのコミュニケーションをさらに発展させたものがQ&A」だと話す。レビューはブランド・メーカーから生の声を伝えることもできるが、基本的には商品を購入した消費者からほかの消費者に対して情報発信する一方通行のコミュニケーションである。これに対して、双方向のコミュニケーションを実現できるのがQ&Aだ。
Q&Aは、購入検討段階の消費者が投げかけた質問に対し、該当商品を購入した消費者や、ブランド・メーカーの担当者や店舗スタッフなどが回答する。これにより、消費者は事前に自分の知りたい情報を得た上で、購入の判断ができる。
Q&Aの有効性を示す事例として、山崎氏はアメリカのシューズブランド「SKECHERS(スケッチャーズ)」を紹介した。同ブランドでは、消費者から寄せられた質問に対して、製品ページへのリンクを付与したフォローアップメールを送ったところ、3時間以内にメールを受け取った消費者のCVRが51%を記録したと言う。
「レビューやQ&Aが生み出す最大の価値は、『購入前の理解度・納得感を高めること』です。これはCX向上のための最大のポイントとも言えます」(山崎氏)