ライブコマース活用は自社の顧客に合った方法で推進を
続いて井上氏は、相談が増加しているライブコマースについて、考えかたが異なる事業者を例に挙げながら解説を進めた。
費用対効果を重視する事業者Aと顧客接点として活用する事業者B
ライブ配信はかかわるスタッフの数も多く、事前準備も必要となる。しかし、限られた日時に配信を行う以上、リアルタイムで視聴できるユーザーは限られており、視聴者数増加を狙ったゴールデンタイムの配信を実施する際には、スタッフに残業代を支払う必要性が生じる。費用対効果を考え、適度な実施に留めたいと考えるのが事業者Aだ。
一方で、リアルタイムの視聴者数は少なくとも良いと考えているが頻度高くライブ配信を行いたいと考える事業者Bも存在する。ライブ配信を視聴するユーザーは、そもそもロイヤリティが高い優良顧客と言える。コロナ禍でもこうした顧客とタッチポイントを持ち、楽しんでもらえればライブ配信をする意味は大いにある、と同社は考えていると言う。
SNSでの配信でOKな事業者Cと、オウンドでやりたい事業者D
なお、配信を行うプラットフォームについても事業者ごとに考えが分かれる点だ。事業者Cは、オウンドで実施するには体制構築に時間とコストがかかるため、InstagramやYouTube、Zoomなど既存のプラットフォーム・ツールを活用し、安価に実施したいと考える。
「ただし、事業者Cはアーカイブを自社サイトに掲載することで、コンテンツを資産としても活用していました。ここは大きなポイントと言えるでしょう」(井上氏)
対して、ブランドイメージ向上や自社ECサイトへの来訪を促すために、オリジナルコンテンツのひとつとして取り入れたいと考えるのが事業者Dだ。自社ECサイト内でライブ配信を行えば、お気に入り登録や購入動線にもスムーズにつなげることができる。将来的には会員限定の仕組みを導入し、購買機能とライブ配信機能をつなげることも構想していると言う。
「こうした施策の展開方法は、各社の顧客層や客単価などによっても変わるものです。今回ご紹介した例は極端ではありますが、ぜひ今後の参考にしていただければと思います」(井上氏)
Instagramのライブ配信で活用できる 多彩な機能を知ろう
ここで井上氏は、Instagramでライブ配信を行う際の便利な機能を紹介した。
このほかにも、ストーリーズで配信日時を告知して認知・集客ができる機能やアンケートの事前収集機能、不適切なコメントを非表示にするなどのコメントコントロール機能も存在している。ライブ配信後は、動画データをダウンロードして利活用することも可能だ。さらには、最大4人でライブ配信ができる「Live Room」という機能も先日リリースされている。
「Instagramでは、ライブコマースに最適な機能が次々とリリースされています。使わないのは損です」(井上氏)
Instagramのライブ配信は、「Instagram内のSEO対策という視点でもメリットがある」と井上氏は続ける。Instagramのフィードで最上位表示を狙うことは、システム上困難であるが、ライブ配信を行うと強制的にストーリーズの最前部に「LIVE」のマークとともにアイコンを表出させることができる。
「認知を取るためにライブ配信を頻繁に行うという考えかたもありでしょう」(井上氏)
また、Instagramのアルゴリズムという観点からも、ライブ配信実施には効果があると言う。フォロワーとのエンゲージメントを評価する指標として、「DM」「コメント」「リポスト」「メンション」「いいね」のみならず、「ライブでの接触」も加わる今、自社アカウントの強化という側面からもInstagram内でのライブ配信は重要となる。