変わりゆく購買トレンド 求められるデジタル化
2. コロナ禍で加速するDX
新型コロナウイルス感染症の流行は、人々の行動自体を大きく変化させ、消費行動や購買プロセスにも影響を与えた。「商品に触れる」という従来のメリットの享受が難しくなったことで、店舗で行う必然性のないサービスは省略・縮小するといった傾向が強まっており、商品購入検討時の情報収集はオンラインで口コミやレビューを見る、実物を見ずに購入を決断できる商品はオンラインで購入し、配送や非接触の手段で受け取るなど、購買行動の多様化も大きく進んだ。
ECは従前より今後の成長分野と予測されていたが、緊急事態宣言時の一時的な巣ごもり需要増を経て、購買手段としての定着がより加速している。総務省が毎月行っている「家計消費状況調査」において、2002年より調査対象にネットショッピングが追加されて以降、2020年5月に初めてネットショッピング利用世帯が全体の50%を突破した。
「そもそもデジタル化はパーソナライズや口コミによる集合知など、顧客にとってプラスになる要素が多く存在しますので、顧客のことを考えればデジタルシフトは急ぐべき事項です。現在の状況が、施策の前倒しを決断するきっかけとなった企業も多いのではないでしょうか。
また、双方向に密なコミュニケーションがかなうインフラが普及したことで、SNSなどを利用した個人の情報発信も定着しています。とくに口コミは、ECやマーケティングに欠かせないツールとなりつつあり、インフラとテクノロジーの進化によってチャットなどのリアルタイムコミュニケーションも充実しています。今は過渡期ではありますが、この動きには期待しています」(山﨑氏)
3. 新たな消費の主役として台頭するZ世代
90年代後半以降に生まれ、子どもの頃からデジタルに慣れ親しむ「Z世代」が年齢を重ねて近年消費者として台頭してきたことも、CXの変容を加速させている。アメリカでは2020年時点で総消費の4割を彼らが占めるというデータもある。大量消費やバブルの時代を知らないZ世代は購買に対して慎重で、検討中のプロセスも重視する傾向があると言われており、いわば「sweet deal」な購買を好む世代がメインの購買層になりつつある。
「Z世代を中心とした消費者に響く施策を考えるにあたっては企業トップだけで意思決定をせず、さまざまな視点から新たなマーケティング施策を模索する必要があります。CXの変容や世の中の流れを踏まえながら、提供するサービスやメッセージの届けかたを考えることが求められます」(山﨑氏)