レビュー・Q&AによるECサイトのメディア化が成功の鍵に
前述した3つの要素を踏まえた上で、マーケティングにおいて山﨑氏が着目しているのは、「レビュー・Q&A」だ。TwitterやInstagramなどに代表されるSNSの普及により、誰もが情報発信を行いやすい時代になり情報は爆発的に増加したが、大量のデータに慣れ親しんだZ世代は広告を見抜き情報の質を瞬時に判断すると言う。
「ハッピーなカスタマーは最高のマーケター」と山﨑氏も語るように、情報が溢れる現代において顧客によるポジティブなレビューは、検討時に安心感を与え購買を大きく後押しする。
海外の事例では、レビューが10件増加するとCVRが1.5倍、50件増加するとCVRが2倍になるといった結果も出ている。実際に消費者の視点に立って考えても、レビューがまったくない商品とレビューが100件ある商品であれば、後者のほうが安心に感じられるだろう。
なおローカル検索ではレビューの親和性がより高い傾向にあり、たとえばGoogle マップ上には、レストラン・食料品店・医療・衣料品店・ホテルなどのレビューが多く掲載されている。また、PayPayでは「近くのお店」という機能から利用可能店舗を検索したりレビューの閲覧ができたりと、地図とレビューの連携が利便性を高めている。
「かつてペイドメディア・オウンドメディア・アーンドメディアといった切り分けがありましたが、今はそのような垣根もなくなりつつあり、EC全体がよりソーシャルになっていると言っても過言ではない状況です。たとえば、膨大なレビューデータを有するAmazonは一大オウンドメディアでありながらアーンドメディアであり、そしてソーシャルメディアとも言えます」(山﨑氏)
口コミ・レビューというコンテンツはSEO対策にも効果があり、多くの消費者にとって信頼性の高い情報として目に触れる機会を生み購買を後押しする。実際にアメリカのAmazonでは、Google検索でヒットしたレビューをきっかけに流入する顧客が7割を占めていると言う。
以前は企業からの一方的な情報発信であったものが近年双方向へと進化したことで、顧客とスタッフ、または顧客同士でコミュニケーションが行われている。Appleウェブサイト内の製品について質問ができるサポートコミュニティでは、メーカー担当者のみならずAppleユーザー同士で教え合う場として機能している。購入を悩む人が質問を投げかけ、「買ってよかった」と感じている人が回答することで購入前の不安を解消し、質問のやり取りを通して自然な形で購買意欲を喚起できる。
「メーカーのスタッフが商品に詳しいことは当然ながら、マンパワーでは消費者のほうが優れていると言えるでしょう。顧客がレビュー・Q&Aを通してほかの顧客やスタッフとつながることで、通信が双方向となりレビューも双方向になっていく。これを実現できれば非常にユニークなメディアとなるはずです」(山﨑氏)