チャットボットの会話データからサイレントカスタマーを顕在化
カラクリは、先進AIテクノロジーを誰でも簡単に活用できるSaaS型チャットボット「KARAKURI chatbot」を中心に事業展開を行う、カスタマーサポートに特化したテックカンパニーである。創業は2016年10月、チャットボットやロボットを活用して、コミュニケーション領域における新たな価値提供を目指すところから同社の歴史は始まった。2017年10月よりサービス展開を本格的に開始し、カスタマーサポート領域の課題を解決すべく、チャットボットやFAQなどを整備。現在は、総合AIサービスを展開する企業として、さまざまな業種・業態の企業の支援を行っている。
チャットボットと聞くと、「対応を自動化することで人員削減ができる」といった経費削減・業務効率化の文脈でとらえるケースもあるが、同社が提供するサービスは少々毛色が異なる。その違いは、顧客が抱える疑問や不満を解決することに加え、これまでとらえることが難しかったサイレントカスタマーの行動を予測して離脱を防ぐことで、新たな売上を生み出す点にあると言える。
「多くのコールセンターでは、『問い合わせてくれた顧客にどのような対応をするか』を軸に顧客体験向上を考えますが、当社は疑問や不満を抱えながらも問い合わせをせずにいるサイレントカスタマーへ向けたアプローチを推進すべく、サービス提供を行っています」
カラクリがECや動画などのオンラインサービス利用者2,080人に対して実施したアンケート調査では、購入・申込目的でウェブサイトを訪れた顧客のうち、70%以上の顧客が疑問・不満を抱いたまま離脱しているという結果が出ている。また、そのうち29.2%の顧客が競合サイトで購入したという結果も出ており、顧客は疑問や不満を抱えていても、声を上げることなく、場合によってはそのまま離脱している可能性が高い。
「私自身、コールセンターBPOでの経験を持ち、日々カスタマーサポート業務に従事する人々が、どれだけ事業に貢献しているかを証明したいと考えていました。さまざまな企業を支援する中で、ストレスフリーな顧客体験を創出すれば、コールセンターが単なる苦情処理センターから、事業の成長や利益に貢献する部署として機能することが見えてきたのです。実際に当社のクライアント様においても、問い合わせをした顧客のほうがリテンションレートが高いという結果が出ています。不満を持った顧客に対して最適な顧客体験を提供できれば、リピート購入などにつながりやすい。間口が広がれば広がるほど、より事業貢献度を高めることができるはずです」
70%以上存在するサイレントカスタマーのうち、1%でも多く問い合わせに誘導し、適切なサポートを施すことができれば、利益創出に貢献することは明白だが、サイレントカスタマーはそもそも問い合わせをしないことがネックと言える。ここで最初の一歩となるのが、問い合わせのハードルを下げることである。わざわざコールセンターに問い合わせをするほどではないが、もやもやした気持ちを抱いているといった際に、チャットボットやFAQがECサイト内に設置されていれば、気軽に質問を投げかけることができる。
「チャットボットやFAQで顧客の生の声を収集することで、離脱するポイントや離脱する理由が明確になります。会話データや各サービスの行動データなどから、サイレントカスタマーの傾向などを分析することで、自社サービスのボトルネックを発見することも可能です。より多くの顧客の声に耳を傾ければ、これまで機会損失を招いていた原因の理解にもつながります。また、チャットボットやFAQであれば顧客の自己解決を促すこともできるため、コールセンターのキャパシティを圧迫することなく、顧客満足度向上を実現可能です」