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「圧倒的」の追求がブランドを支える メーカーズシャツ鎌倉がECに持ち込んだ接客とは

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クレームはブランド愛の象徴でもある 意識の変化が生んだ当事者目線

四元 カスタマーサービスの業務には何年ぐらい携わっていたのでしょうか?

田原 2017年まではお客様からの電話やメールの応対をしていたので、6年ほどですね。

四元 おほめの言葉だけでなく、お叱りなどさまざまなお客様の「心の声」を聞いていたかと思いますが、どう感じていましたか?

田原 いただく声の中にはもちろんクレームもありましたので、少ない人数で対応していると嫌になってしまうことも最初の頃はありました。しかしあるとき「僕らの対応で会社のことを好きになってもらい、また買おうと思ってもらえるようにしなくては」と気づいたのです。

 その上で「なぜこのお客様はクレームの連絡をしてきたのだろう」と考えてみました。すると、僕らや実店舗スタッフ以上にメーカーズシャツ鎌倉のことを見守り、真剣に考えてくれている方が多かったのです。「僕の好きな会社なのに、思っていたような接客が提供されなかった」「昔の接客は良かったのに、会社が大きくなって変わってしまった」といったご意見は、当社を愛しているからこそ出てくる言葉ですよね。「創業時の良さが薄れている」と忠告してくださっている。そう思えるようになってからは、どんなクレームも怖くなくなりました。実店舗スタッフへのフィードバックも「お客様からこのようなクレームがあったので改めましょう」ではなく「こういったことで悲しんでしまったお客様がいました」と伝えかたを変えていきました。

四元 テクニック以上にお客様の期待値を理解する必要があり、それをクリアしなければ商品を買ってもらうことはできない。まさに田原さんは、接客の本質をカスタマーサービスの経験を経て理解したということですね。

田原 「お客様の期待通りでなかった」ということは僕からしても本当に申し訳ないことで、その素直な気持ちを電話やメールでお伝えすれば理解していただけることがほとんどです。「僕もメーカーズシャツ鎌倉のファンなので、そのお気持ちはわかります」と同調するような応対にシフトしたことで、お客様との共感度も増すことができたと感じています。

四元 田原さんは当事者目線をもっていらっしゃる。近年のものの売りかたはテクニック論に走ったり、インフルエンサーなど人気者の知名度で売ったりと、すぐに結果が出るやりかたに逃げてしまっているように僕は感じていました。「実店舗スタッフのレベルが下がっている」とコロナ禍以前から言われていましたが、「あなたたちはこれだけお客様から期待されている。だからこそ、期待に応えるだけのことをしなくてはならない」という意識づけを本部側が怠っていたことも理由のひとつだと考えています。田原さんが言うように、お客様は何らかの期待をして実店舗に足を運んでくださっている。だからこそ、プライドをもってその期待に応えるという責任を果たさなくてはなりません。もしかすると、研修としてカスタマーサービスの業務を体験してもらうといったことも、これからの実店舗スタッフには必要なのかもしれませんね。

田原 当社は、2020年3月より開始したチャットコンシェルジュのサービスの中で、期待に応えるための意識づけや相互送客など「考えかたのオムニチャネル化」を進めることができたと感じています。現状は一部の実店舗スタッフがチャットコンシェルジュの対応をしている状況ですが、ひとりの考えかたが着火してどんどん広がっていく、という自然な流れができることが大事だと思っているので、感度の高い実店舗スタッフから徐々に全員に責任感を根づかせることができればと考えています。

メーカーズシャツ鎌倉は、2020年3月にチャットコンシェルジュを自社ECサイト内に導入。
実店舗スタッフもシフトに加わり、デジタル上での顧客対応を実践している。

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