2019年の2倍近くにまで市場規模が拡大 中国のライブコマース事情
中国で爆発的成長を見せているライブコマース。コロナ禍で需要はさらに高まり、2020年6月に行われた「618商戦」においては、KOL(Key Opinion Leader)や芸能人だけでなく、企業トップや地方政府などもこぞって配信を行うなど、ライブコマースの配信方法や配信者の属性についても多様化が進みました。ライブコマースユーザー数についても、2.6億人を突破し、さらなる盛り上がりを見せています。今回は、中国のライブコマース事情にフォーカスし、主要プラットフォームやインフルエンサー、そして11月に行われた大セール「独身の日」の最新情報を交えながら紹介します。
まずは、流行の背景や利用者の動向についてです。もともと中国では、大手ECであっても偽ブランド品の出品が数多く発生していました。そのような状況下で、ライブコマースは画像と違って加工ができないことや、販売者の声を聞いて直接質問ができることなど、リアルタイム配信ならではの特徴が強みとなり、徐々に浸透していきました。
中国のITサービス会社「MobTech」の「2020年度中国ライブ配信事業についての洞察」によると、ライブコマースのユーザー層の男女比は1対1で、25~34歳のユーザーが中心となって利用しているようです。また、6割以上が3線都市以下(※1)に住むユーザーということから、直接商品を見て購入できなくとも使用感や着用感がわかりやすく、どの地域にいてもその場で配信者とコミュニケーションを取ることができる点に需要があることがわかります。
※1 中国では、生活レベルや商業資源などを踏まえ、1~5のレベルで都市を分類している。1線都市は北京、上海、深セン、成都などの大都市、第2都市は寧波、大連など地方都市を指す。3線都市以下は、農村部や田舎の地域が多い
なお、ライブコマース全体の市場規模は年々成長しています。中国のリサーチ会社「iiMedia Research」が発表した「2020~2021年 中国ライブコマース市場のデータ分析とトレンド調査」によると、2020年の市場規模は9,610億元(約15兆円)になると予測されており、前年の4,338億元(約6億9兆円)の2倍近くにまで拡大する見込みです。
特徴を改めておさらいしよう 主要プラットフォーム3選
中国では、ライブコマースを行っているプラットフォームが複数ありますが、その中で有名なものを3つ紹介します。
淘宝直播(タオバオライブ)
アリババグループが設立した中国最大級のオンラインモール「淘宝(タオバオ)」のライブコマースアプリです。ECサイトから派生しているため、購買意欲の高いユーザーが集まる点が特徴です。タオバオライブでは2020年、アプリのユーザー数が前年比470%増を記録しており、とくに新型コロナウイルス感染症の拡大が本格化した2020年2~3月の1ヵ月間は、135%増と著しい伸び率を記録しています。
快手(クァイショウ)
快手は、ショートムービー型のサービスとしてスタートしたものですが、近年ライブコマース機能が追加され、売上を伸ばしています。熱狂的なファンがついている人気ライバーが数多くいるため、ライブコマースにおいてもリピート購入につながっています。
抖音(ドウイン)
抖音は、中国版TikTokを指します。独自のアルゴリズムにより表示されるコンテンツがパーソナライズされることで、自分の好みに合った配信やライバーに巡り合うことができます。これまで抖音では、タオバオやTmallなど他社の商品リンクを紐づけることが可能でしたが、2020年10月には、自社ECプラットフォームである「抖音小店」への出店を促すため、他社の紐づけができなくなりました。ライブ事業の成長にともない、自社EC事業をさらに促進する動きが見られています。