日本オムニチャネル協会設立 企業のデジタルシフトを推進へ
日本に店舗・拠点を持つ企業のオムニチャネル化を推進する「日本オムニチャネル協会」が2020年4月に設立された。理事として同協会に参画する逸見さんは、元セブン&アイ・ホールディングス 取締役 執行役員CIOの鈴木康弘氏やecbeing 代表取締役社長の林雅也氏をはじめとする設立メンバーとの話を振り返りながら、昨今の状況をこう語った。
「日本オムニチャネル協会は、林氏が1年半ほど前に設立を提言し、賛同者が集まるところから始まりました。その後、私が師匠の鈴木氏と話している際に日本国内企業のデジタルシフトが後回しになっている状況を危惧していることが話題となり、同氏にも参画をお願いすることになったのです」
鈴木氏の懸念していたことは、まさにコロナ禍で露呈した。業務のデジタルシフトが進んでいないことにより、本来ならばリモートでもできる業務を行うためにわざわざ出社したり、捺印をするためだけにオフィスへ出向かねばならなかったりする状況が多くの企業の現実だ。テレワークを整備するにあたり、自社サーバーの増強が必要な企業も多い。急増するEC需要に対し、運用面や物流面での課題も表出している。
このような状況を受け、逸見さんは最近DXの本質について考えていると言う。
「企業がDXに取り組む際、eコマースの環境整備やアプリの提供など、顧客接点となる部分をデジタル化する話に終始していることが多い印象です。ところが、本来DXを進める際には、まず組織の風土・文化を変革から始める必要があります。これは、経済産業省が2018年12月に発表した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)』でも言及されています。顧客ニーズを満たす必要ももちろんあります。しかし、そのニーズに応えられるものを作り、維持していくためには社内が変わっていかなくてはなりません。DXを進めるためには、経営・業務・ITの3本軸で改革を進める必要があります」
たとえば、実店舗で収集した会員データがきちんとデータベース化できていれば、実店舗を営業できない状況でも、顧客に対しECへの案内が可能となる。在庫連携が行われていれば、ECで欠品した商品を実店舗の営業再開後に購入希望者へ再度案内することも可能だ。バックエンドの整備ができていないと、こうした予期せぬ事態の際に、顧客へ適切なサービス提供ができないのみならず、売上損失と顧客離反の原因を自ら生み出してしまうことにもなり得る。
「インフラを整備できていなかった企業は、今現場社員の負担が大きく増加しています。なんとかして売上を伸ばしたい気持ちがあるならば、これを機にきちんとデジタル環境を整備しなくてはいけない。人によって聖域化されていた業務もデジタルに置き換えられないか、今一度見つめ直す必要があると言えます」