世界全体がよりボーダレスに 自治体も行う販路拡大支援
不要不急の外出自粛要請が首都圏に出された3月末頃から急速に拡大したEC需要。消費行動がオンラインに移行することは、物流の動きにも大きな影響を及ぼしている。
「とくに実店舗が休業を決めてからは、かつて経験したことがないレベルにオンラインの需要が伸びているという声を各EC事業者から聞いています。ネットスーパーやUber Eatsなどデリバリーに対するニーズも上昇し、ECを活用した消費行動が確実に幅広い層に広がっていることを実感しています」
伊藤さんは、「アフターコロナと呼ばれる世界において、実店舗のありかた、EC活用のされかたは大きく変わるのではないか」と語る。
「これからは、世の中全体がより効率の良いチャネルにシフトチェンジしていくのではないでしょうか。2003年にSARSが流行した際、現在ほどECは発達していませんでしたが、同感染症の流行を皮切りに、中国の人々はオンラインでの購買に目を向けるようになりました。すでにこのような事例もある上、かつ今回の新型コロナウイルス感染症の流行はほぼ全世界に及ぶものです。世界の購買市場がECに大きく移行し、より国境がボーダレスになっていくのではないかと考えています。越境ECなども感染症の拡がりが収まった暁には、伸びていくはずです」
ボーダレス化と人口減少というふたつの事象が重なることで、日本も今後はより海外への販路拡大を視野に入れる必要があると、伊藤さんは続ける。こうした展開に向けた行政の働きかけは、コロナ禍の中でもすでに始まっており、4月16日には新潟県が「海外展開加速化支援事業」として、県内企業に対し、越境ECサイトの構築などに要する費用の一部助成を発表している。
「地域限定や地元密着を謳い、実店舗のみでこれまで販売を行ってきた企業も、今後はECでの販売戦略を、物流体制の構築や見直しも含めて行っていく必要があると言えます。感染症が沈静化した先に見えるのは新たな世界です。早急な対策をおすすめします」