OMOを体現する次世代の店舗のありかた「POP UP店舗」
POP UP店舗とは、期間限定でイベント的に出店する店舗のこと。日本ではまだそれほど見かけないが、山崎氏によれば海外ではかなり増えてきているという。
POP UP店舗は売場面積が限られていることが多く、大量の商品は持ち込めないものの、出店期間内に在庫切れとなれば大きな機会損失になってしまうという難しさがある。そこで有効なのが、店舗は体験の場として位置付け、決済以降の機能はECに任せるOMO型の販売スタイルだ。
事例として、ECで家具を販売しているベンチャー企業のPOP UP店舗を紹介。7月に香港で開催されたテックイベント「RISE」にその企業が登壇し、山崎氏はセッションを聴講して知ったそうだ。そのPOP UP店舗はショールームのように商品を体験できる場になっており、実際の商品購入はすべてEC経由で行う仕組みだったという。
「家具は配送扱いになるものがほとんどなのでECとの相性が良い一方で、実物を見てから購入したいというニーズも高い。まさにPOP UP店舗に適した商品といえます」(山崎氏)
実際に、そのPOP UP店舗では購入単価が30%向上、CVRも35%向上し、顧客への接触から購買までの時間は40%短縮されるなど、高い成果をあげたそうだ。
「日本でも限られたスペースでの商品デモンストレーションなどは見かけますが、それをECと連動すれば、POP UP店舗としてそのまま商品の販売まで行えるようになります。将来的には、主要駅構内などにたくさんのPOP UP店舗が並ぶようになるのではないでしょうか」(山崎氏)
レビューをはじめとした積極的な情報提供が重要に
「モノを見るのはオフライン、買うのはオンライン」という購買行動が広がってくると、それに合わせた新たな店頭マーケティングが求められるようになる。そこでは「ECの果たす役割がより重要になる」と山崎氏は続ける。
「消費者は店頭でもスマートフォンを見てさまざまな情報を収集することが、今は当たり前になっています。それを止めることは現実的に不可能でしょう。では、どうすればよいかというと、積極的にその情報収集に協力するしかありません」
具体的には、まず自社ECサイトで商品の性能や成分などのスペック詳細、価格推移、レビューなどの各種情報を充実させること。そして、店頭で顧客がそれらの情報をすぐ見られるように、タブレットを常設して表示したり、顧客のスマートフォンから容易にアクセスできるようにQRコードを用意したりといったことが考えられるだろう。
提供すべき情報の中でも特に重要なものとして、山崎氏は「レビュー」を挙げた。山崎氏が紹介した米国のリサーチ会社のレポートによると、ECサイトのレビューが1つもない商品に1件レビューがつくとCVRが10%増加し、10件になるとCVRは1.5倍に、50件になると2倍になるという結果が出ている。さらに、4点のレビューが20件あるよりも、3.5点のレビューが100件あるほうがより多くの売上を上げるという、レビュー母数の重要性を示す統計データもあった。
「時には耳の痛い批判的なレビューを書かれる可能性もありますが、それらも受け入れて積極的に取り入れていく必要があります。OMO時代においては、レビュー情報が外部でしか入手できないという状況は大きな機会損失につながり、自社のサイト・店舗の顧客をみすみす流出させてしまうことにもなりかねません」(山崎氏)