今求められるのは「ユニファイドエンゲージメント」
こうした状況を背景に、セールスフォース・ドットコムが提唱するのが「ユニファイドエンゲージメント」だ。これまでセールスフォース・ドットコムでは、コマースデータを中心に顧客の購買行動を統合管理する「ユニファイドコマース」を推進してきたが、それをさらに進化させた考えかたとなる。ユニファイドエンゲージメントでは、より顧客体験にフォーカスして、あらゆるタッチポイントにおける顧客データを共通のプラットフォームに集約。コマースだけでなくマーケティングやサービスも一体的に考えて、統合管理していくという。
ユニファイドエンゲージメントを支えるセールスフォース・ドットコムのソリューションとしては、マーケティングプラットフォームの「Marketing Cloud」、ECプラットフォーム「Commerce Cloud」、サービスプラットフォーム「Service Cloud」などがある。共通の統合顧客データ基盤のもと、これらを連携させることで「ユニファイドエンゲージメントプラットフォーム」を構成し、購入前から購入後まで一貫した顧客体験を提供することが可能となる。
「これら3つのソリューションは現状でもシームレスに連携可能ですが、2019年中にリリース予定の『Salesforce Customer 360』を活用いただくことで、より手軽にポイント&クリックの操作で連携できるようになります」(西村氏)
Commerce CloudのAIでショッピング体験はどう変わる?
ECプラットフォームであるCommerce Cloudの大きな特徴として挙げられるのが、「Commerce Cloud Einstein」と呼ばれるAIを標準機能として実装していることだ。このAIの活用により、どのようなことが可能になるのか。西村氏は、コスメブランド「e.l.f Cosmetics」のECサイトで実施したある「実験」を、動画キャプチャで記録したスマートフォンの画面を見せながら紹介した。
実験の内容は、ふたりの姉妹に30分間、それぞれスマートフォンで自由に買い物をしてもらい、その後に表示されるレコメンドなどを確認するというもの。買い物を始めると、姉は主にフェイスパウダーやチークを、妹はリップスティックを中心にカートに入れていき、最終的にはそれぞれ300点以上の商品を購入して時間終了となった。
スタート時にはふたりともトップページに同じバナーが表示されていたが、30分間の買い物を終えて再びトップ画面に戻ると、姉のほうはフェイスパウダーのバナー、妹側はリップスティックのバナーに変化。レコメンデーションで表示される商品も同様に変わり、AIがそれぞれの行動を学習して出し分けていることがわかった。
さらに、ふたりとも同じように検索ウィンドウに「pink」と入力した際にも、検索結果はそれぞれ異なる表示となり、ピンクのフェイスパウダー(姉)、ピンクのリップスティック(妹)が並んだ。
「AIがデータを蓄積・分析し、レコメンデーションはもちろん検索結果についても、各ユーザーの行動に基づいて購入してもらえそうな商品をパーソナライズして表示します」(西村氏)
なお、Commerce Cloudでは、レコメンデーションのほかにも「Predictive Sort(プレディクティブソート)」と呼ばれる商品並べ替えのパーソナライズや、運用者向けに商品の関連性を可視化する「Commerce Insight(コマースインサイト)」などのAI機能を提供。今後提供予定の機能として、画像検索で商品を見つけられる「Visual Search(ビジュアルサーチ)」などもあるという。