ユーザーはデジタルとアナログを縦横無尽に行き来している
今回のイベントテーマである、何かを買おうと思った時に「最初に声がかかる店」になるには、ユーザーとどのようなコミュニケーションをとるべきなのだろうか。ともするとデジタル一辺倒になりがちな時代だが、アナログな手法も組み合わせることでで、ユーザーとのエンゲージメントはさらに深めていけるのではないか。
そこで今回の基調セッションには、第33回全日本DM大賞でグランプリを受賞した「パーソナライズドDM」の実践者であるディノス・セシール 佐々木拓也氏と、イーリスコミュニケーションズ鈴木睦夫氏に登壇いただき、アナログなDMとデジタルなデータを組み合わせで行う施策の考えかた、その成果について語ってもらった。
鈴木 言わずもがな、今はデジタルの時代です。マーケティング全般で「データドリブン」が注目されています。実は、データドリブン的な考え、それを実践する手法は何十年も前から存在していました。しかし、当時はインターネットも普及しておらず、データの集計は手書きで行うという具合で、実行するハードルが高すぎたのです。それが今では、クラウドやスマートフォンなどテクノロジーが発達し、運用コストも下がって、データドリブンの実行が可能になりました。ビジネスの主流になりつつあるデジタルマーケティングは、迅速に施策の成果がわかることから重宝されています。MAやDMPが登場した数年前には「デジタル万能論」すら唱えられていたほどです。
そうは言っても、ユーザーとコミュニケーションを重ねていくのに、実はデジタルだけでは不十分なんですね。なぜなら私たちは、バーチャルの世界だけに生きているわけではなく、ユーザーはデジタルもアナログも縦横無尽に行き来しているからです。デジタルマーケティングは、効率の良し悪しがすぐにわかるけれど、そこばかり見ていると効率の良いことしかやらなくなって、縮小均衡になってしまう。
Eメールのリーチは顧客全体の10%にも満たないし、デジタル広告をブロックするアプリもユーザーに支持されています。オンラインだけでは接触できないユーザ―が多数いるのが現状なのです。
だからこそ今、デジタルとアナログを組み合わせることが注目されています。「日経BPコンサルティング実施・マーケティング実態調査(2018.2)」によれば、デジタルとアナログの組み合わせ施策に取り組む企業は年々増加傾向にあります。さらに、デジタル施策のみを行っている場合と比較すると、両者を組み合わせた施策を行っているほうが、満足度が倍以上違うという結果も出ているのです。