アリババが推進するニューリテール戦略とは
Alibaba Cloudを含むアリババグループ全体で推進しているのが、「ニューリテール」戦略だ。ニューリテールとは、2016年に開催されたCloud Computing Conferenceでアリババ創業者のジャック・マーが提唱したコンセプト。その鍵となるのは「オンラインとオフラインの融合」、「消費者体験の向上」、そして「データドリブン(データ主導)」であることだ。
リテールビジネスのボトルネックは、オンラインとオフラインそれぞれに存在する。たとえば、ECサイトでは実際の商品を手に取って試すことができない。一方、実店舗は店舗そのものや人件費などのコストの負荷が大きく、ニーズの的確な把握や商品の安定供給もオンラインに比べて難しい。
「テクノロジーを駆使してこれらの課題を解決し、オンラインとオフラインの双方で補完し合い、より優れた消費者体験を提供する。それが、アリババが目指すニューリテールの世界です」(下牧氏)
ニューリテールを具現化した次世代型店舗も登場
すでに中国では、ニューリテールのコンセプトを取り入れた店舗も登場している。そのひとつが、アリババグループが展開するスーパーマーケット「ファーマーシェンシャン」だ。
同店ではすべての商品にQRコードで認証できるE-Tagが付いており、スマートフォンで読み取って商品の価格や情報を見られるほか、そのままECサイトで注文することも可能。店内を巡回するスタッフはオンラインの注文を確認して商品をピックアップし、配送にまわす。店舗から3km圏内のエリアなら、注文から30分以内に商品が届くという。
このシステムにより、顧客は店頭で商品を選んで購入し、そのまま手ぶらで帰宅して自宅で商品を受け取ることができる。もちろん、従来のネットスーパーの買い物として店舗に行かずに自宅から注文してもよい。
下牧氏はさらにニューリテールの別の事例として、アリババが自社主催イベントを開催した際に実験店舗として出展した無人店舗「Tao-Cafe」を挙げた。
「Tao-Cafe入店時に顧客は入口でTaobaoアプリをスキャンしますが、これにより信用度の判定まで行っています。決済は商品を持って店舗から出るとAlipayで自動的に処理される仕組みで、商品購入のためにレジに並ぶ必要がありません。また、購入した商品などの情報は自動認識・蓄積され、次回のレコメンドに活用されることになります」(下牧氏)
ほかにも、併設されたカフェでは顔認識の技術によってミラーに映ったユーザーの顔の上にそれぞれの注文進捗を表示するなど、新たな消費者体験の提供も実現しているという。