ゼンリンを認知する層の若返りも図りたい オンオフ両チャネルの位置づけとは
こうして、2019年12月に創業の地・北九州の市街地 小倉の商業施設内にMap Design GALLERYの1号店を構えたゼンリンだが、開店直後にコロナ禍に直面。ブランド展開の道筋としてオンライン展開は当時から視野に入れていたそうだが、「予期せぬ世の中の変化によって必然性がより高まり、2022年6月にオンラインストアを開設した」と山口氏は語る。
「Map Design GALLERYは現在、九州に4店舗を構えていますが、実店舗の出店は慎重に計画する必要があります。オンラインストアであれば全国の地図ファンの方に商品をお届けできるため、ゼンリンとしての若年層への認知拡大や顧客数の拡大には必須だと考えました」
企業として継続的な成長を目指すには、常に若い世代との接点を図り、ビジネスの新陳代謝を図らなければならない。ゼンリンは昭和の時代からビジネスを通して知名度と信頼の向上を図ってきたが、近年は認知層が40~50代に偏っており、こうした点からも新たなタッチポイントの創出は急務だったという。
「店舗は、地元の方や観光で九州に訪れた方との接点として活用し、オンラインストアはこうしたお客様と継続的な関係を築いたり、SNSやお土産をきっかけにMap Design GALLERYを知った方が商品に触れたりできる場として活用できたらと考えています」
現在、Map Design GALLERYの売上構成比は、概算で店舗7:オンラインストア3ほど。今後は九州地方以外にもPOPUPなどで露出を増やしつつ、オンオフの両輪を回すことで顧客への解像度を高めていくそうだ。
「有人離島」がトレカに!? 深い知識×新鮮な視点で生まれる個性ある商品
Map Design GALLERYの最大の強みは、なんといっても地図を軸にした“ニッチさ”だ。いわゆる「地図オタク」に刺さる仕立てと、地図を「デザイン」と捉え日常に馴染む形に落とし込む勘どころを両立させ、オリジナリティーある商品を作り上げている。その秘訣は、在籍歴の異なる社員それぞれが発揮する「深い知識」と「新鮮な視点」にあると、山口氏は説明した。
「いずれも、地図を扱う企業ならではな“変態的”ともいえるこだわりだと思います。たとえば定番商品として扱っている『47都道府県ピンバッジ』は、一辺最大3cmほどのサイズであるにもかかわらず、市区町村の境界線を詳細に刻んでいます。ここまで細かい線を再現するのは技術的にも難しいらしいのですが、デザイナーが熱い想いを込めた結果、このような精巧な仕上がりになっています」
「また、SNSで大きな反響を呼び、入荷のたびに即完売してしまうトレーディングカード『Map Design GALLERY CARD/有人離島』は、中途入社の社員がアイテム考案し、歴の長い社員が『離島』という題材を提案しました。
ゼンリンに長年いると、扱っていることが当たり前だと思うデータの中にもおもしろいと思えるものがある。まるで、社内に眠る宝の山を掘り起こすかのように深い知識と新鮮な視点がうまく連携し、こうしたヒット商品が生まれています」
