詐欺まがいの広告にどう対処するか 今後乗り越えるべき課題
田中(Yuwai) 具体的な活用事例を聞いてみると、CtoCプラットフォームにおける広告運用のメリットが見えてきました。その中で特に気になっていたのですが、今は特定の代理店経由でしか、メルカリAdsには出稿できないですよね。一方で、中小企業からすると、広告主が自ら配信設定などをできる「セルフサーブ広告」の需要が高いのではないでしょうか。
赤星(メルカリ) そのとおりではあります。私が過去に在籍していた企業での経験からいえば、基本的に中小企業の年間成長率のほうが大企業よりも高いです。広告による伸びしろが大きいといえます。そうした企業に対しては、セルフサーブ広告はやはり必要だと思いますし、いつ開始すべきか考えているところです。ただし、難易度が非常に高いとは感じています。
田中(Yuwai) そうですね。ほかの大手プラットフォーマーでも、リリースまでに何年もかかっている印象です。準備期間は必要ですよね。
赤星(メルカリ) 中小企業の場合、広告にかけられるコストの関係から、大手企業と比較して広告のクオリティにバラつきがあります。場合によっては、お客さまが詐欺広告と勘違いしてしまうものも少なくありません。それでも訴求したいから、どんどん広告を作って出してしまう。
一見すると、設定などの手間が省ける点でメルカリにとって効率的にも思えますが、コントロールできなければ無法地帯になりかねません。インフラを整えられない限り、気軽に参入できるサービスではないと感じています。
しかし、セルフサーブ広告をやること自体は既に決めています。インフラ整備とタイミングの調整が今の大きな課題ですね。
田中(Yuwai) 広告ポリシーや審査基準の設定は、特に苦労する部分かもしれませんね。また、ここは利益が生まれる部分でもないですし、企業として時間をかけづらい可能性もあります。
赤星(メルカリ) それでいうと、大部分をAIに助けられています。5~10年前は、人の手で広告審査をしていましたが、できる数が限られますし、人によって基準にブレもある。場合によっては、クレームにつながってしまいます。そのため、メルカリAdsでは広告をAI審査に切り替え始めています。広告主にとっても、人に審査されるより納得感があるようです。
メルカリは一般消費者からの出品も含めて、ありとあらゆるカテゴリーの商品が並ぶプラットフォーム。だからこそ、ノイズになってしまいそうな広告クリエイティブの配信を防げるよう、丁寧に対応していきたいところです。

田中(Yuwai) 今後の広告事業のアップデートが楽しみです。具体的にどのような展開を計画しているのか、最後に教えてください。
赤星(メルカリ) しっかりと商品の購入につなげる、ダイレクトレスポンス広告にフォーカスしていきます。お客さま基盤とファーストパーティデータを組み合わせれば、さらにマーケティングの質を上げられるはずです。
当社は、設立10周年を迎えた2023年、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を新たなグループミッションとして定めました。今はまだまだモノの売買がメインですが、メルカリAdsを通じてお客さまとサービスもつなげていきたいです。メルカリAdsの取り組みは、グループミッションと合致しているんです。この取り組みから得られたデータを使って、また新規事業を立ち上げ、新たな価値を生み出し続けたいですね。