Z世代特化の新EC 顧客をブランドアンバサダーに育てるには
FWDでは、トレンドを意識した約60の商品カテゴリーが用意されている。取り扱っているブランド数は約90。また、Z世代向けに毎週約4,000点もの新商品が公開されているのも驚きだ。Sinha氏は「新鮮さが重要」と語る。
しかし、ここまで多くの新商品を用意していると不良在庫の発生が気になるところ。それを解決する上でMyntraが注力しているのが、データ活用だ。正しくトレンドとニーズを捉えれば、正しく在庫を用意できる。そんな考え方が裏側にあるのだろう。
「当社では毎月2,000万人のユーザーデータを分析しています。具体的には、顧客が何を検索・閲覧しているのか、クリックしているのか、お気に入りに登録しているのかなどの情報をリアルタイムで認識できる環境です」(Sinha氏)
その上、同プラットフォームは約10万人のインフルエンサーと協業している。彼らが毎月30万点ものコンテンツを、FWDのアプリ内外で拡充しているという。それを“コミュニティ志向”と掛け合わせたユニークな取り組みが「Ultimate Glam Clan」だ。
「多くの顧客が、心のどこかでクリエイターになりたがっています。そんな人々のためのコミュニティとして、Ultimate Glam Clanを立ち上げました。顧客がクリエイターとなって購入した商品やスタイリングを投稿していく場所です。彼らは私たちにとって“最高のブランドアンバサダー”となってくれています」(Sinha氏)
アジアの中で、アパレルの最前線を走る1社ともいえるMyntra。ほかにも、会話を通じてスタイリングなどを提案する「MyFashionGPT」のような新ソリューションを、世の中に提案し続けている。こうした思い切ったアイデアによって、その地位を強固なものにする考えだ。
シンガポール「Love,Bonito」 欧米ファストファッションと何が違う?
NRF 2025 APACの開催地であるシンガポールで、特に女性から支持を集めているアパレルブランドがある。「Love,Bonito(ラブボニート)」だ。Myntraとはまた異なるやり方で、事業を拡大している。
同ブランドは“アジア人女性のための洋服”を重視し、2010年にスタートした。共同創業者の一人であるCEOのDione Song氏は、ファストファッションがあふれる現代のアパレル市場をこう語る。
「昨今のアパレル市場は“騒がしい”と表現できます。ショッピングモールが新たなアパレルブランドを欲しているでしょうか。私はそうは思いません。そんな競争の激しい市場に参入する上で何よりも重要なのは、『なぜこのブランドが存在するのか』を明確にすることです」(Song氏)

シンガポールをはじめとするアジアには、欧米から様々なブランドが進出している。そんな中で、Song氏は「アジア人女性に本当にフィットする洋服ではない」と感じていたという。
日本も含めて、アジアと欧米では人々の平均身長もプロポーションも異なる。進出する国の消費者に合わせてカスタマイズされていても、ギャップを完全に埋めるのは容易ではない。だからこそLove,Bonitoは、アジア女性の視点を大切にしてきた。
「シンプルな工夫で良いのです。たとえば、多くの女性はブレザーの腕をまくります。しかし、すぐに落ちてしまう。ずっと袖のあたりをいじる人もいれば、中には袖の下にヘアゴムを入れてとめておく人も。ならば、最初から商品の裏側に薄いゴムをつけておけば良いですよね。こうした細かい点にこだわってきました。
投資家から『ニッチすぎではないか』といわれた経験もあります。しかし、誰にでも合う商品を作るだけでは、一般化してしまい誰にも響きません。私たちは、顧客中心主義を追求しているのです」(Song氏)