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ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

押さえておきたい!ECトレンド図鑑

なぜ売れる?アジア成長アパレル2社が示す 日本のブランドに足りない視点/NRF 2025 APAC

10年前の新規顧客 30%以上が今でもアクティブユーザーの理由

 Love,Bonitoの強みは、顧客との長期的な関係構築にある。10年前に初めて商品を購入した顧客の30%以上が、今もブランドを愛用しているという。その理由について、まずはオフライン進出に触れなければならない。

 元々、EC販売のみだった同ブランド。8年前の2017年にはじめて実店舗をオープンした。現在、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、香港、カンボジアで合計30店舗近く展開している。オフラインでもEC発ブランドならではの発想でデータを活用し、顧客との関係を強化してきた。

「通常、実店舗では顧客が“匿名化”する恐れがあります。その場で商品とレシートを渡して関係が終わることが珍しくありません。最初の実店舗を出店する際、このようなブラックホールに飲み込まれたくなかったのです。自社ECサイトなら、流入からチェックアウト、返品まで顧客の動きを追跡できる。実店舗でも基本に立ち返ろうと思いました」(Song氏)

 そこで同社は、ロイヤリティプログラムを構築し、各顧客の全取引をオンライン・オフライン問わず一つのIDに統合した。Song氏は「オフライン取引であっても、約90%の顧客は“誰か”を認識できる状態」と話す。結果的に顧客に最適化されたコミュニケーションが実現でき、長期的な関係構築につながっている。

 これが、パンデミックを乗り越える上でも役立った。当時のLove,Bonitoでは、オンライン・オフラインの売上がそれぞれ約50%ずつと、ちょうど良いバランスとなっていた。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、一気にバランスが崩れたという。そんな状況の中、一人ひとりの顧客にIDを振っていたことが功を奏した。

「顧客に直接連絡を取れる状態でした。『今はショッピングモールが閉まっているが、またLove,Bonitoに戻ってきてほしい』と、伝えられたのです。そのため、大きなダメージを受けずに成長を続けられました」(Song氏)

 パンデミック後も、Love,Bonitoはオンラインだけの売り場に戻ることはなかった。Song氏によると、東南アジアではショッピングモール文化が強いという。顧客に寄り添ったブランドになる上で、オフライン進出は必然。実店舗でも独自路線の施策によって、魅力を発揮している。

「多くの女性客がパートナーと一緒に買い物をしに来ます。ところが、彼らは途中で飽きてしまう。そんなカップルのために、ショッピングモールと交渉して『パートナーベンチ』を設置しました。さらに、店内にもパートナーや家族がリラックスして過ごせるコミュニティスペースを設けています」(Song氏)

 こうした施策が、TikTokでミーム化。「Love Bonito Boyfriend(Love,Bonitoの彼氏)」などと投稿され、思わぬ形でブランドの認知度と親近感を高める結果となった。これは、顧客の体験全体をデザインし、共感を呼ぶストーリーを生み出すことの重要性を示唆している。なかなか日本では見かけない取り組みではないだろうか。

@erika_alyana

he carries all my shopping bags & even googles the other stores I wanna visit so we can go there 🥺

♬ this sound makes me feel so sickly single x - 🐐

 Myntra、Love, Bonitoの取り組みは、日本国内でブランドを展開する企業にとっても、新鮮なヒントとなるはずだ。日本の企業にとって、従来のやり方を変えるタイミングが訪れている。

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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