Minimalが実験 広告効率を高めるKlaviyoセグメント配信の工夫
今回のイベントでは、Klaviyo導入のメリットだけでなく、導入初期の注意点や未導入社から見た懸念点などについても言及。TSIの岸氏は「大企業がCRMツールを導入する際は、リアルな接点を含むマルチチャネル対応が大前提」と強調した上で、配信時のタイムラグの少なさといった安定性、英語力などスキルのばらつきがある大規模組織で属人化しないよう、日本語でのサポート体制が構築される未来に期待を寄せた。
こうした声を受け、土屋鞄製造所の持丸氏は「英語に苦手意識があっても、『Google翻訳』などを使えば、ある程度理解はできる」と補足。さらにMinimalの兒嶋氏から、直感的なUI/UXについて次のような感想が述べられた。
「Shopify上で閲覧・購買されている商品のTOP10を自動生成できる機能は、非常に便利です。これをテンプレート化すれば、ドラッグ&ドロップでメールが作れるようになり、5分もかからずにレコメンドメールが作成できます。
また、Metaの広告と連携したセグメント作成ができるのも、当社としてはメリットに感じています。サブスク加入者に広告が表示されないようにするなど、成果に違いが出るかまさにA/Bテストを実施しているところです。今後は管理画面の日本語対応や、LINE公式アカウントとの連携にも期待しています」(Minimal 兒嶋氏)
「LINE公式アカウントとの連携は、私もぜひ実現してほしいと思っています。ヘラルボニーではまだ全配信しか行っていませんが、既にタイトルのA/Bテストの成果を直感的なUIで見られるなど、データ分析のしやすさや施策の円滑化といったKlaviyoの利点を享受できています。近日中にシナリオ配信も実施する予定なので、結果が楽しみです」(ヘラルボニー 北村氏)

LINE連携は、土屋鞄製造所の持丸氏も期待を寄せているという。Klaviyoは既にWhatsAppとの連携を実現しており、ヨーロッパや東南アジアなどではKlaviyo×メッセージングアプリの可能性が広がりつつある。日本での普及を進めるR6Bとしても、LINE連携は優先度高く本国にリクエストしているとのことで「今後の展開に注目してほしい」と同社の代表取締役 師橋淳一氏は語った。
なお、パネルセッションの最後には質疑応答の時間が設けられ、Klaviyoをはじめとするメール/MA活用やCRM推進の疑問点、不安点について、参加者と登壇者で意見交換が実施された。ここではその一部を紹介する。
Q. Klaviyoを導入したが、まだ「活用できて楽しい」の域に達していない。どうすれば使い倒せるか?
「Klaviyoの独自用語などわからないことがあるかもしれませんが、壁にぶつかったらAIに聞いてみると割と解決します。私はマーケターとして『仮説が当たって売上が上がればうれしい』をモチベーションにしているので、良い意味でゲーム感覚をもって取り組んでみるのも良いと思います」(土屋鞄製造所 持丸氏)
「『お客様がどのタイミングでメールが来たら嬉しいか』を想像しながら、とにかく手を動かしてみてはいかがでしょうか。それで実際に売上が上がると、『これが当たるならあれもやってみよう』とアイデアが湧いてくるはずです」(イオンスポーツ 山﨑氏)
Q. セグメントやシナリオを稼働させ始めたら、離脱防止策に目がいくようになった。何か対策はしているか?
「『いらないメール』と思われないよう、配信頻度×質のチューニングは常に行っています。購読解除数を月次で追い、『ブランドらしくないふるまいをしていないか』など振り返りながら、シナリオを磨き込んでみてはどうでしょうか」(Minimal 兒嶋氏)
「実店舗も展開している当社の場合、メルマガからの離脱=ブランドからの離脱でないケースが多く散見されます。一つのチャネルの結果にとらわれずカスタマージャーニー全体で見て、他チャネルでエンゲージが高いのであればそれで良しと判断するのも、ロイヤルユーザーを正しく把握する上では必要な行動です。もちろん、こうした定義づけがきちんとできるよう、顧客IDベースでの分析やCDPの構築も欠かせません」(TSI 岸氏)
Q. 事業フェーズや会員数など、Klaviyoを導入する目安を知りたい。
「セグメント配信など、Klaviyoの効果を存分に体感するには、5,000人から1万人程度の会員数は必要だと思います」(土屋鞄製造所 持丸氏)
「イオンスポーツでも、1万人超えが見えてきたタイミングで導入しました」(イオンスポーツ 山﨑氏)
「熱量の高い顧客だけでなく、ライトな層にも届き始め、メッセージをそれぞれに向けて変えたいと思う目安が1万人なのは、私も共感します。ブランドの成長フェーズとしても、この数字は一つのターニングポイントになるのではないでしょうか。セグメントを切って、ファンにはより好きになってもらう工夫を、ライトな層にはファンになってもらうためのアプローチをKlaviyoで行っていくと良いと思います」(ヘラルボニー 北村氏)
Klaviyo×他ツールで広がる可能性 顧客情報管理がポイントか
今回のイベントでは、Klaviyoのポテンシャルをさらに高めるため、他ツールやサービスとの連携法についてもアドバイスがなされた。
連携例
- 「チャネルトーク」(株式会社Channel Corporation):Klaviyo経由でECサイトに遷移した顧客へ専用ポップアップを配信し、セグメントごとにフィットするコミュニケーションを実現。Klaviyoで配信したメール内で完結するチャット導線も設置できるため、顧客が触れたチャネルからそのまま問い合わせに進める快適な体験提供も可能となっている。
- 「Appify」「VIP」(株式会社Stack):SDKを利用し、AppifyとKlaviyoを連携させることで会員ステータスに合ったプッシュ通知の出し分けを実現。Shopify FlowとKlaviyoのセグメント・シナリオをつなぎ合わせれば、ポイントの付与・失効通知などといった購買意欲喚起につながるアプローチも可能となる。
- 「Omni Hub」「どこポイ」「App Unity IDP」など(フィードフォースグループ):店舗・ECサイト・コミュニティ・ポイ活など複数チャネルをまたいだ顧客行動を一元管理し、Klaviyoと連携してメール配信・プッシュ通知を実現。Shopifyを使ったCDP構築を叶えられる。
この他にも、株式会社アパレルウェブは自社EC内でのRaaS(Resale as a Service:循環型eコマース)フロー確立、BtoB-EC展開、Shopify POSを活用したOMO施策などを含めたShopifyでの統合的体験構築の有効性を紹介。AnyMind Group株式会社からは、新たに提供開始したAIエージェント導入・運用特化型ソリューション「AnyAI Workflow」の可能性が語られ、eコマースの拡張を目指すマーチャントにとって有益な情報が提供される1日となった。
