販促強化のためMA運用を分業化した土屋鞄製造所 イオンスポーツ・ヘラルボニーの体制は?
続いて、メール/MAの運用実態について各社の回答が紹介された。顧客の嗜好が細分化し、パーソナライズされたアプローチが求められる一方でEC担当者はタスクが多く、「思うようなアプローチが実践できていない」と悩む方も多いのではないだろうか。ここでは、課題と向き合う各社の工夫が垣間見える回答を得られた。

「私は、土屋鞄製造所で大人用の鞄を対象に、CRO(コンバージョン率最適化)とCRMを担当しています。現在、サービス機能の開発やサイト改善、CRM施策の企画・推進はグロースマーケティング部が主導する体制です。一方、事業部は日々の販促や在庫管理などオペレーションに特化することで、より効率的な運営が可能になりました」(土屋鞄製造所 持丸氏)

「イオンスポーツが運営する『ZEROFIT公式オンラインストア』では、少人数体制のため、内容の決定から運用・チェックまでを一貫して担当しております。こう伝えると膨大な作業に見えるかもしれませんが、Klaviyoで型を決めればルーティン化が可能です。今は分析や振り返りをする曜日・時間を確保し、そのタイミングで『いつ』『誰に』『何を配信するか』を決めてメール作成・配信設定を実施。翌週に結果を踏まえて次の配信に生かすフローで回しています。
最初は、英語表示に抵抗感があり使い方がわからず全配信に終始していましたが、今回一緒に登壇している榊原さんにレクチャーいただいてからはコツをつかんで、やりたい施策を形にできるようになりました。慣れれば直感的に使えるので、Klaviyoは非常に便利なツールだと思います」(イオンスポーツ 山﨑氏)

ヘラルボニーでは、ECサイトやCSを含むオンライン上の顧客接点すべてを北村氏らのチームが手がけており、業務委託のライターなどの手を借りながらメール/MA推進を行っているとのこと。ブランドの根幹部分にも関わる企画やスケジュール策定、数値の振り返りは北村氏が担い、アンケートなどで顧客の生の声も聞きながら、配信頻度や訴求内容の磨き込みを続けているという。
店頭接客にヒントを得て顧客からの申し出が0件に ANNA SUIが配信した“あるシナリオ”とは
CRM施策をより効率的かつ効果的なものにするには、イオンスポーツの山﨑氏が語ったようなルーティン化や、ヘラルボニーの北村氏が実践する配信頻度・内容の磨き込みも欠かせない。ここでは、Klaviyoを使ってセグメントやシナリオをいくつ設定しているか、PDCAサイクルを回す中で効果があった取り組みなどについて触れられた。
「2021年に入社した当初から、MinimalではKlaviyoが導入されていましたが、1年超で100個以上のセグメントを作成しました。意図的に増やしたわけではなく、送りたいコンテンツや購買履歴、サブスク入会有無などの会員ステータス、Shopifyの顧客タグなどを掛け合わせていったらこうなりましたね。ただし、頻繁に使っているのは10個程度です。
シナリオは稼働中のものが20個ほどで、F2転換に注力しています。『購入後に同梱物に反応した』などのトリガーを起点に設計したステップメールが、効果を上げています」(Minimal 兒嶋氏)

アルビオンの榊原氏は、Klaviyo導入を決める前に作成したいセグメントやシナリオをシミュレーションし、利用開始初日に100個弱のセグメント、20個程度のシナリオを作成。店頭活動をメール/MAで再現することを目指し、配送先の都道府県や誕生月、購入商品といったセグメントごとに購入後の実店舗送客メール、購入商品の使い方などのフォローメールを送信し、着実な成果も得られているそうだ。
「『ANNA SUI』で販売している『ヘアー ブラッシュ』と呼ばれるヘアブラシは、通気口として穴が設けられているのですが、これを不良品とみなしてEC購入者から返品・交換のお申し出を受けることが多く、課題となっていました。
そこで、店頭での補足説明を生かし、Klaviyoから購入者に商品特性と使用方法をお伝えするメールを自動プログラムで送り始めたところ、問い合わせが0件になりました。この施策の手応えから、ラッピングボックス購入者へ組み立て方のレクチャー動画を送るシナリオも作り、同じような成果を得ています」(アルビオン 榊原氏)