エンタメを支える裏方 グッズでVTuberとファンの距離を縮める
順調に事業を拡大しているホロライブプロダクション。ファン層の広がりはデータでも可視化されている。以前は20~30代の男性が多くを占めていたが、最近では10代の割合も伸長。親子で実店舗やイベントに訪れるファンも増えてきた。
一方で、課題もある。特に海外展開にあたって、大きなハードルとなっているのが物流だ。
「配送料や正確さは改善の余地があります。ファンの期待に応えるため、より安定した配送ができる体制を整えている段階です。もちろん、海外ファンにグッズを届ける方法がEC販売のみとは限りません。現地での製造、実店舗を通じた販売の可能性も考えています。どちらの方法をとるにしても、世界中のファンとつながるためにリソースを増やして組織を強化していきます」(前田氏)
加えて、データ活用を通じたマーケティング領域にもまだ伸びしろがあるという。
「グッズ販売を始めて、まだ5年程度しか経っていません。データの拡張と蓄積は進んできましたが、具体的な活用はまだまだこれからです。長く楽しんでもらえるコミュニティ作り、そしてそれを支える自社ECサイトの理想像に近づけるため、正しいKPIを設定する上でも分析やデータの利活用を進めたいと思っています」(一條氏)

こうした取り組みを進める上で、前田氏と一條氏は「グッズを購入してもらうのがゴールではない」と強調する。あくまでもグッズはVTuberとファンをつなぐ手段として捉えているからだ。
「ファンが”推し”とコミュニケーションを取るのは、基本的にYouTubeやXといった場がメインです。VTuberとの間にはどうしても距離が存在しています。そうした距離を縮めてくれる、日常を補完してくれるのがグッズではないでしょうか。音楽ライブやリアルイベントでも、ペンライトや”推し”のグッズを手に楽しんでいただくファンの姿がかなり多く、非常に感慨深いです」(一條氏)
「どんなエンターテインメントも、日々の活力になるはずです。ファンの方には、VTuberをより身近な存在に感じてほしいと思っています。当社は、その手伝いをする裏方だといえるでしょう。私たちも、SNSで所属タレントやファンの反応を見ながら喜びを感じています。引き続き、ふとした瞬間にグッズを見て前向きな気持ちになってくれる人を増やしていきたいですね」(前田氏)