来年度の売上目標は“あえて”1.5倍 EC↔メディアの行き来を増やす
本格的なマーケティング活動を始めた「わざわざ」だが、平田氏はメルマガの内容改善にも力を入れている。全会員に毎週1本配信する「わざわざ平田のリアル買い物日記」に加えて、セグメント別のメルマガも80%は平田氏が作成しているという。
「お客様が何をクリックするのか、どのような書き方だと響くのかが感覚的にわかっていても、まだ言語化して説明できない状態です。ほかの社員に伝えられないため、今は私自身が書いています。様々なパターンでテストを重ねている段階です」
こうした取り組みからは、平田氏がもつコンテンツへのこだわりがうかがえる。たとえば「わざわざ」は、サイトリニューアル前から商品に関する記事やメーカーへのインタビューをオンラインで公開してきた。平田氏は「商品のよい点を表現する手段として、メディアを作っている」と話す。
「スーパーマーケットで買い物する際、商品の裏を見れば原材料名などを確認できますよね。ECサイトの場合はそれができません。しかし、商品に関する情報が販売元から提供されている状態が、当たり前だと思うのです。
当社は『よき生活者になる』というメッセージを発信しています。そのための情報提供は不可欠です。『わざわざ』の自社ECサイトに来るたびに記事を目にすれば、商品を大切にするきっかけにもなるでしょう。勉強しながら買い物ができる。そんな場でありたいです」
新たな「わざわざ」の自社ECサイトには、「よきマガジン」というコンテンツのコーナーが設置されている。編集長には、フリーランスの編集者・あかしゆか氏が就任した。取材ごとにライターを依頼するなど、外部チームと協業してコンテンツを生み出している。
「月に1回は社内のカメラマンとあかしさん、私の3人で編集会議を開きます。3人全員が『よい』といった人だけに取材するルールです。メディアを足掛かりに、商品の認知を広げたいと思っています。現時点では、自社ECサイトとメディアで顧客層が分かれています。2つを行き来するお客様を増やすのが、今後の大きなテーマの一つです」
コンテンツ戦略も含めて、これから3年の経営方針を既に社内に共有したという平田氏。来年度は、EC売上全体で今年度の1.5倍を目指す。
「躍起になって売上を作れば、何倍にもできるはずです。しかし、それでは社内も混乱し、業務が煩雑化します。パートナー企業を苦しめることにもなりかねません。いち早く成長することだけが、社会にとってよいことではないと思っています。
人員を増やす予定も、今のところはありません。コンパクトなチームで、社員が気持ちよく働いてくれています。まずは彼らの給料を上げたいのです。EC事業はバックオフィスがしっかりしていれば、人員を追加しなくても成長が見込めます。よい給料で楽しく仕事ができる環境を作っていきたいですね」