オーダーメード接客と“食べる”のエンタメ化が個性に
「『蝶結び』は、『想いを伝えるフルーツギフト』をコンセプトに展開するブランドです。出産をはじめ誕生日や結婚など、幸せな1日に華を添えるギフトを提供しています」
こう語るのは、2020年に勤めていた果物店の廃業を機に、EC初心者であるにも関わらず「ひとりEC」を始めた杉下氏だ。
創業初年度に取材したECzineの記事では、「コロナ禍で思うように出掛けられない・会えないが、大切な人に想いを届けたい」という需要に目を向け、チャット機能を活用したオーダーメード接客を極める様子を紹介した。この取材から2年半強、着実に顧客を増やしながらも、産直EC市場の拡大などといった市場変化から「独自性を出すための付加価値創出がより必要になってきた」と自社の現在地を振り返る。
「産直ECは、生産者の顔が見える上に鮮度や価格面で優位性をもっています。卸から商品を仕入れる『蝶結び』がこうしたプレーヤーと同じ販売手法を用いても、当然勝ち目はありません。
『何を極めるか』を考えた結果、二つの施策に行き着きました。一つ目は、従来のeコマースでかゆいところに十分に手が届いていなかった包装、のし、一筆箋などといったギフト要素と商品のカスタマイズ。そして二つ目は、私自身が目利きとなってお届けする『食べくらべセット』の拡充です」
ギフトは商品の購入者と利用者が異なる一風変わった商材なだけに、贈り手・受け手双方に体験を創出する視点も欠かせない。ものを介して生まれるコミュニケーションや幸せの連鎖を想像した結果、杉下氏は「“食べる”のエンタメ化」に行き着いた。
「きっかけは、創業初年度にバレンタイン商品として考案した『いちご食べくらべセット』のヒットでした。産地や品種の異なるいちごを数種類詰め合わせて提供したところ、思った以上の反響を得られたのです」
食べくらべセットは、その後ホワイトデーにも展開。一定の手応えを得た杉下氏は、りんご、ぶどう、かんきつ類など季節ごとに商品ラインアップを拡充した。いちごであれば、「淡雪」などといった白い品種を、ぶどうであればシャインマスカットやピオーネなど色・形の異なる品種をそろえ、梱包を開いた瞬間から視覚でワクワク感を演出できるような華やかさにも気を配っているという。
「創業初期から取り組んでいるオーダーメード接客がここで生きてきます。たとえば、ギフトを受け取る相手が2人暮らしであれば、大粒のいちごをゆっくり味わえる内容に。大家族であれば、小粒のいちごをたくさん詰めて食べくらべパーティーができるようにと、コンセプトから提案して思い出作りの一翼を担えたらと考えています」