参列者が「結婚式って素敵だな」と思えるように
黒河(ロックウェーブ) まず、松田さんが参列者向けのレンタルドレス事業「ANDYOU DRESSING ROOM」を始めた経緯について、教えてください。
松田(アンドユー) 私は新卒でノバレーゼに入社し、約5年間広報の業務に携わっていました。2018年11月、社内ベンチャー支援制度に応募して大賞を受賞し、2019年1月に子会社として立ち上げたのが、アンドユーです。ノバレーゼでは長年、総合ブライダル事業を展開していますが、新郎新婦向けサービスが主でした。それとは切り口を変えて参列者向けのサービスをつくろうと、新規事業を提案しました。
黒河 視野を広げるきっかけは、どこにあったのでしょうか。
松田 広報として業界全体を見る中で、新郎新婦向けサービスはどんどん進化して素敵なものが出てくる一方、参列者に向けたサービスは十分でない点が気になっていました。ファッションの流行は移り変わっても、参列者向けのドレスはAライン、膝丈、ボレロを羽織るなどいわゆる「定番」が決まった状態です。参列時の服装が悩みの種となるケースは多く存在しており、ご祝儀などで出費も多い中、参列者にとって結婚式が価値の高いものになっているのか疑問を抱いていました。
そんなある日、一緒に結婚式に参列した友人から「みんながこんなに大変な思いをしないといけないのなら、私は絶対に結婚式はやらない」という声を耳にしました。「結婚式って素敵だな、自分もやりたいな」と思ってもらえなくてはこの業界は続きません。ヘアメイク、ドレスなど、参列時に特に手間や出費がかかる女性の負担を軽減することで、結婚式全体の価値を高めたいと考えました。
レンタル特化のECカートを求め、ほぼ即決
黒河 松田さんの強い想いが形となった「ANDYOU DRESSING ROOM」ですが、ECサイト構築において「aishipRENTAL」を採用した理由は、どこにあったのでしょうか。
松田 レンタルサービスを運用できるECカートを探したところ、「aishipRENTAL」を見つけました。ECサイト構築で実績があるロックウェーブが提供していて安心感もありましたし、実際に話を聞くとレンタルに特化した機能が網羅されていることがわかり、相見積もりなどは取らずに即決しました。
レンタルECは、通常販売と異なり返却日や返却後のメンテナンスを鑑みた特殊な在庫管理が必要です。「aishipRENTAL」では、こうした設定が管理画面から容易に行える上、SEO対策やCRM機能も揃っていました。他社サービスを追加導入しなくても多彩な施策展開が実現できる点は、大きな決め手となりました。
黒河 レンタルECを仕組みとして実装できるECカートは直近で増えていますが、松田さんから相談を受けた頃は、確かに選択肢があまり存在しない時代でしたね。2019年2月に申し込みをいただき、4月にサービスローンチというスピード感でしたが、サイト構成やデザインを決める際に苦労したことはありましたか?
松田 社内にデザイナーはいるのですが、システム担当者やコーダーはいない状況だったため、ロックウェーブがパートナー契約をしている制作会社を紹介してもらいました。サイトのイメージやデザイン案を共有し、コーダーの方とやり取りしながら進めましたが、「aishipRENTAL」の仕様を熟知している方なので非常にスムーズに作業が進み、心強かったです。今も保守や定期的な機能追加などをお願いしています。
初心者にも伴走 疑問解決のスピード感に驚き
黒河 新規事業の規模感だと、ECカートの仕組みを理解したコーディングができて、SEOにも強いコーダーと出会えるかどうかは非常に重要です。システムまわりの設定などはロックウェーブがサポートしましたが、印象的なエピソードはありますか?
松田 私自身、ECサイト運営の経験があるわけではないので、疑問が生まれたらすぐに専任のサポート担当の方に相談していました。システムに関する知識も十分ではなく、不安を覚えていましたが、質問の回答はほぼすべて当日中にいただけていたので、サポート体制の手厚さを感じました。会社立ち上げから3ヵ月でサービスのローンチ、かつ新規事業は立ち上げ初期のスピード感が重要です。同じ速さで伴走してくれる点は、非常に心強かったです。
黒河 当社では回答品質の向上だけでなく、問い合わせ案件が解決するまでの所要時間も徹底して管理しています。なお、「ANDYOU DRESSING ROOM」ローンチ後の運用でお困りごとはありますか?
松田 管理画面は実際に触ってみないと使い心地がわからないため、正直不安に感じていたのですが、思っていた以上に直感的に操作ができ、すぐに使いこなせたので安心しました。ローンチ直後は「とにかくコンテンツ量を増やそう」と自ら手を動かしていたのですが、ECサイト運営初心者の私でも特集ページやコンテンツの作成が容易で、非常に助かりました。
尖ったブランドにはせず、おしゃれのハードルを下げる
黒河 サービスローンチから4年経ちましたが、事業の現在地を教えてください。
松田 サービス利用者数は、累計7,000人を超えました。特にリピーターが多く、2回以上の利用者が約20%となっています。レンタルECは、商品を販売するECと比べてリピート率が高く出やすいとはいえ、何度も利用してくれるお客様がいるのはありがたいですね。チャット接客を行ったり、商品配送時にメッセージを添えるようにしたりといった、細かな働きかけが伝わっているのかなと思っています。
黒河 ドレスは着用感も大事ですよね。ECだと試着できないことが主なカゴ落ちの理由になるかと思いますが、「ANDYOU DRESSING ROOM」で工夫している点はありますか?
松田 商品詳細ページで色味や透け感がわかるように、着用写真を多く掲載したり、動画もアップしたりと、伝えられる情報はすべて伝えようとこだわっています。丈や肩幅、ウエスト、袖口などの実寸も掲載していますし、具体的にイメージしてもらいやすいよう、「お手持ちのワンピースと照らし合わせてみてください」といった訴求もしています。最近では、パーソナルカラー診断と骨格診断をチャット接客ツール内に導入しました。「このドレスは私に似合うかしら」と悩む人の背中を押せたらいいなと考えています。
黒河 商品画像やコンテンツは、サービスローンチ直後からこだわりを見せていますよね。松田さんの「参列者にもドレスを楽しんでほしい」という気持ちが伝わってきます。こうした想いや世界観がしっかりとお客様にも伝わっているからこそ、リピートにつながっているのではないかと感じました。
松田 想いや世界観を伝えることは意識していますが、私は「ANDYOU DRESSING ROOM」を尖ったブランドにはしたくないと思っています。多くの方にレンタルドレスを楽しんでもらうには、憧れよりも親しみやすさが大事です。結婚式の参列者がおしゃれをするハードルを下げることが、より多くのお客様との出会いを生むと考え、見せ方や伝え方にも反映しています。
SEO対策とコンテンツ強化で力を蓄えたコロナ禍
黒河 サービスローンチから1年も経たないうちにコロナ禍が訪れましたが、「ANDYOU DRESSING ROOM」のビジネスにはどのような影響がありましたか?
松田 イベント開催自粛が呼びかけられた2020年3月以降、ノバレーゼグループ全体で結婚式のキャンセルが相次ぎ、「ANDYOU DRESSING ROOM」の受注件数もほぼゼロとなりました。当社に限らず、ブライダル業界全体が大打撃を受けましたが、サービスローンチから1年足らずというタイミングもあり、私は「もうやめたほうがいいのかな」とまで思いました。
ところが、ノバレーゼの役員が「サービスとして価値があるから、なんとか踏ん張ってほしい」と励ましの声をかけてくれたのです。この言葉で、私も発想を切り替えられました。ノバレーゼグループ全体で「苦しいときはいつか終わる」と励まし合い、できることをやろうと奮闘していましたが、怒涛すぎてこの時期の記憶はあまり鮮明でないのが正直なところです。
コロナ禍が長引くにつれ私が恐れていたのは、結婚式に対する価値観が変わってしまうことです。「結婚式なんてやらなくていいよね」と思われてしまったら、業界全体が立ち行かなくなってしまいます。しかし半年ほど業界の様子を見ていると、結婚式を予定していた方の多くは、「中止」ではなく「延期」の選択肢を望んでいることがわかってきました。この動きを見て、私も「アフターコロナに向けて今できることをやろう」とより前向きになれました。実際に今は特需といえる勢いで結婚式の件数が増えており、価値観の変容が起きなくてよかったと思っています。
黒河 結婚式が行われず、需要がほぼゼロとなった時期はどのような取り組みを行っていましたか?
松田 サイト内のコンテンツ強化やSNSでの発信に注力しました。SEO対策として1日で3記事制作したり、既存素材を使ってInstagramに投稿するクリエイティブを制作したり、商品の付加価値を高めることに重きを置いて、ひたすら手を動かし続けました。会社が続いているからこそいえることですが、サービスローンチから1年ずっと走り続けてきたので、少し立ち止まって自社サイトや他社のサービスを俯瞰する良い機会になったと思います。
新サービスとレンタル×販売のクロスセル強化に期待
黒河 コロナ禍初期はレンタル業界全体が厳しい状況でしたが、アウトドア需要の伸びからキャンプ用品のレンタルサービスが好調な兆しを見せたり、新たなサービス展開を行い、事業の柱を増やしたりといったケースも見えていますね。
松田 当社もコロナ禍を機に結婚相談所と提携し、婚活用の衣装レンタルサービスを始めています。同サービスの運用を考える際にも「aishipRENTAL」の機能が役に立ちました。
同サービスは開始当初、私が手動で在庫管理と商品提案をしていました。参列者向けサービスとの在庫統合が難しかったことが理由ですが、件数が増えてくるにつれ、システムの力に頼るべきだと考えました。決済と配送はサービスの仕様上実装する必要がなく、在庫状況を踏まえた予約機能さえあれば良いという状況だったのですが、なかなか良い方法が見つからず黒河さんに相談したところ、「aishipRENTAL」で効率的に運用する方法を教えてもらえたのが印象的です。想定されていない使い方でも実現に向けて一緒に考えてくれ、非常にありがたく感じました。
黒河 当社としても、「aishipRENTAL」の新たな使い方を見出せ、印象的な案件でした。絶えず挑戦を続けている松田さんですが、今後の「ANDYOU DRESSING ROOM」で注力したい領域や施策展開があれば教えてください。
松田 目下の目標は、商品の幅を広げることです。今は20代から30代の女性向けドレスを主にご用意していますが、親御さん世代や和装、キッズ、マタニティなど、レンタル需要のある領域はまだまだあると思っています。
「メンズを取り揃えてほしい」というお声をいただくこともありますが、男性はスーツを既にお持ちの方も多く、どのようなラインアップであればレンタル需要を創出できるのか、まだまだ検討段階です。女性向けのアプローチは、レンタル・販売双方に対応可能な「aishipRENTAL」の特長を活かし、ドレスに合う小物類を提案するなど参列者に寄り添いながらクロスセルの施策にも取り組んでいきたいですね。
黒河 ここは、当社もまだまだ支援できるポイントがあると考えています。たとえば、希望するドレスと同じ日程で予約できるレンタルアクセサリーやバッグを提案できれば、より使い勝手が良くなりますよね。こうした機能の開発も、現在進行系で実施しています。また、表示速度の改善に向けたCMSの刷新も予定しています。
「aishipRENTAL」は、システムにものすごく明るいレベルでなくても、最新のECトレンドを踏まえた機能実装やセキュリティ対策が実現できます。スピード感を持ってレンタル事業を始めたい方は、ぜひこうしたASPカートの良さを活かしていただければと思います。当社では、一から事業を立ち上げる方に対してもプロの担当者がしっかりとサポートいたします。