リソース不足の現場 MAツールを使いこなせないケースも
近年、企業と顧客の関係性は大きく変わりつつある。アプリを使った顧客とのコミュニケーションなど、オンラインを介したサービス提供が増加。ユーザー登録・購入後のサポートのように、顧客と長期的・継続的に関係を構築することも当たり前になってきている。
こうした状況下でエンゲージメントや顧客満足度の向上を実現するには、データの活用による顧客1人ひとりに合わせたコミュニケーションの最適化や、パーソナライズ化された施策の実行が求められる。すでに変化を実感しているEC、マーケティング担当者も多いのではないだろうか。しかし、リソース不足などさまざまな要因から、新たなツール活用や施策への着手、それらを踏まえた効果検証の確立にまで手が回っていないケースも決して少なくはない。
「オンライン上でさまざまなサービスが提供できる今、カスタマージャーニーの理解は必要不可欠です。今目の前にいる顧客は、オンボーディング、または利用促進からロイヤルティ醸成に至る過程の、どの位置にいて、どんな心理状態なのか。ビジネスゴールをどこに見据え、それを達成するための道筋をどう描くべきなのか。組織全体でこうした思考をしながらマーケティング活動に取り組んでいる企業は、現状ごくわずかです。
その背景には、組織体制の課題があげられます。近年はCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)など、顧客体験を一元的に把握・管理するポジションや、それに準ずる部署を設置する企業も増え始めていますが、日本企業全体から見ればまだ少数派です。顧客はときと場合に応じて自由にチャネルをまたいでいるにもかかわらず、企業の担当者や施策がそれに適応できていません。結果として顧客体験が分断されているのが実情と言えるでしょう。
また、マーケティングツールやソリューションが進化している一方、それを使いこなせる人材やリソースが不足しているのも課題です。たとえばMAツールを導入する際、ダイナミックな分析やパーソナライズを実現するにはMAツールと社内システムを連携させる必要がありますが、それには社内の情報システム部門(情シス)の協力が不可欠です。また、顧客データの分析や抽出をより詳細に行おうとした際には、データサイエンティストの支援も必要です。データ収集・活用の粒度が高くなればなるほど、いち担当者だけでは実現が難しくなり、スムーズなマーケティング活動、データ活用へのハードルが高くなっている状況と言えます」(黛氏)