商材問わず、価値を認めるコミュニティへの訴求が鍵となる時代に
続いて紹介したのは、「越境ECと相性の良い商材はあるか」という質問だ。ペイパルの調査によると、海外通販利用者がもっとも購入しているのは「衣料品/アパレル/靴/アクセサリー(34%)」であり、以降は「美容関連/コスメ(18%)」「家電商品/コンピュータ(16%)」と続いている。
「日本から海外へ販売されている商品カテゴリーに目を向けると、1位はカメラ、2位はアパレル、3位は玩具、以降はコスメ、ジュエリー、ゲームなどが挙がっています。芸術・工芸品は10位です」(ペイパル 大津氏)
「日本に興味を持つ海外の消費者は、InstagamやTiktokなどのSNSで情報収集していることがほとんどです。また、アニメやカメラ、ファッションなど興味関心でつながったコミュニティには世界各国の人が集まり、常日頃から『どの製品が良いか』『どこで買ったのか』といった情報交換がされています。日本製品が話題になった際にECで購入してもらうチャンスを逃さないようにしましょう」(Lingble 原田氏)
中村氏は「これからの時代は、1人ひとりに好きになってもらえるような価値を創出することが大事」と語った上で、さらに「コミュニティ作りが鍵となる」と補足。

中村氏の話を踏まえた上で、原田氏はさらにこう続けた。
「従来の海外展開は展示会に出展し、現地のディストリビューターや小売店に販売する流れが一般的でした。実店舗に商品を置いてもらい、目の前を通る人により多くヒットする方法を考えるのが主軸でしたが、今は購入の選択肢が多岐にわたる時代です。また、製品やサービスを無条件に愛してくれるファンを『ブランド』ととらえるのであれば、こうしたコミュニティのつながりが強固なインターネットで体験やエピソードが共有される現象に目を向けることも欠かせません。
たとえば、Denimioでは『デニムが縮んだ』とお問い合わせをいただいた際に代替品を送ったところ、そのお客様が対応に感動してリピーターになってくれただけでなく、製品やカスタマーサポートの対応についても周囲に広めてくれたという出来事がありました。そこには、代替品をお送りした以上の効果が生まれています。無条件に愛してくれるファンを増やすには、製品の質を追求するだけでなく、手厚いカスタマーサポートやストーリー、事業者やブランドとしての考えを発信することも忘れてはなりません」(Lingble 原田氏)
情報発信の例として、原田氏は廃水を浄化して周囲の田んぼに返している岡山のデニムブランドを紹介。「フランスのファッションブランドの戦略責任者が工場見学をした際にその光景を目の当たりにして、たいへん感銘を受けていた」と続けた。つまり、その土地の住人にとっては馴染み深い瀬戸内海の風景も、ブランドイメージ向上に貢献しているということだ。このように、大きな価値となり得る種を落とさないことも必要と言えるだろう。
「越境EC、グローバルEC展開で意識すべきは、『価値にお金を払ってもいい』と考える消費者の増加と、こうした人々にリーチしやすい環境が揃ったということです。たとえ、消費者の大多数が『安くて良いものが欲しい』と考える時代が到来しても、きちんとメッセージを伝えていれば『高くてもその考えかたに共感して買う』という消費者と出会うことができます。認めてくれる消費者がたとえ1%であったとしても、世界中を市場にすれば大きな売上につながる。成長戦略を立てる際には、こうした視点も大切です」(Lingble 原田氏)