失われたインバウンド需要を限られたリソースで取り戻す
レディス・メンズ・キッズとさまざまなターゲットに向けた靴下やタイツ、レギンスなどのレッグウェアを自社グループ内で製造・販売するタビオ。同社が展開する「靴下屋」では、日本国内197店舗(2022年2月末時点、フランチャイズ店含む)の店舗とECチャネルを活用して商品販売を行っている。
コロナ禍以前から国内外を問わず自社ECやモールへの展開を行っていたものの、あくまで販売の主軸は店舗であった同社。インバウンド観光客の増加とともに、空港や銀座などターゲット層が集まる場所・街への店舗展開、販売強化を進めていたが、日本をはじめとする各国が出入国規制を行った2020年春以降のダメージは大きかったと武田さんは言う。
「国内に住む人々も外出ができない状況が続き、それによりEC売上は伸長しました。しかし、店舗のダメージをカバーできるほどではなく、海外からのお客様に頼っていた部分も大きいことに気づかされました。インバウンド観光客を意識した出店が功を奏していたことの表れでもありますが、その苦しさは今現在(2022年5月時点)でも続いているのが正直なところです」
「失ったインバウンド観光客からの売上を少しでもECで取り戻すことができないだろうか」と考えた武田さんは、自社ECに台湾、アメリカ、中国などの国々から流入がある点に目をつけた。タビオには海外部が存在し、同部署がフランス、イギリス、中国への店舗・EC出店とアメリカでの自社EC展開の業務を現地法人とともに担っている。しかし、台湾はかつて店舗を展開していたものの、2020年に撤退しており、このように需要がありながらも販売網が備わっていない国に向け、自社EC内で国外配送の仕組みを整えるべく、武田さんは情報収集を始めた。
「実はインバウンド需要が目に見えて増えてきた2016年頃にも越境ECに興味を持ち、さまざまな企業から話を聞いていました。しかし当時は決済と配送のフローが課題となり、自社のリソースで着手するのは困難と判断して見送っていたのです。
ところが、コロナ禍をきっかけに改めて最新の越境EC事情を調査したところ、当時と状況がかなり変わっていることに気がつきました。プラットフォームやサービスの種類が増え、コストやリソース面での負担をそこまで要しない選択肢もあるのであれば、すぐに動き出せる。そう思い、導入の決断をしました」
Google Analyticsなどを用いて顧客分析をした結果、武田さんは台湾と韓国の2ヵ国をターゲットに定め、自社ECにてタグ設置のみで海外販売可能な「Buyee Connect」を用いた海外顧客向け販売を2021年11月より開始。現在、台湾の顧客が自社ECから購入する海外顧客の9割を占めているとのこと。
「この数字を見て、今後はターゲットを台湾に絞り込み、本格的なマーケティングに着手しようと思っています。現状はSNS広告を配信している程度にとどまっていますが、先日現地のお客様へのインタビューを初めて実施し、生の声から発見を得ることができました」