翻訳対応なしでもビジュアルフックで購入へ ミニマムに始め、成果を出して次につなげる
自社ECで越境ECに取り組む場合、翻訳などの対応コストも気になるところだ。タビオの自社ECでは、どうしているのだろうか。
「本来は対応すべきだと思うのですが、当社の自社EC内は現状翻訳対応をしていないため、お客様自身がブラウザなどの翻訳機能を活用して閲覧してくださっている状況です。それでも購入が生まれている理由は、自社EC内で意識的に着用写真などのビジュアル訴求を強化している点にあるのではないかと考えています。アパレルなどの場合は、サイズ感や質感を言葉で説明する必要がありますが、靴下はある程度サイズ展開が決まっていることも、言語の壁を越えやすい理由のひとつと言えるのかもしれません」

なお、店舗展開の経験があったことから、台湾向けには越境EC開始以前からFacebook・Instagramのアカウントを開設していたこともプラスに作用したと言う。
「店舗閉店時のお知らせを最後に投稿していなかった靴下屋の台湾向けアカウントを、越境EC開始後に再始動させ、『自社ECから購入できます』とアナウンスを行うようにしています。こうしたお知らせや広告から流れて購入してくださっているお客様がいるのも、すでに見えています」
台湾向けのマーケティングについては「まだ勉強中」と語る武田さんだが、すでに半年ほどで「多くの発見を得ている」と続ける。
「いわゆる売れ筋と呼ばれる商品のラインナップがそこまで大きく変わらないのは、ファッションのトレンドなどが近しいアジア圏ならではだと思います。欧米向けの展開ではそもそも商品選定から変えているので、それと比較すると少ない工数で売上を生み出せるのは魅力的です。
実際に台湾向けに販売をして興味深いと感じたのは、主流とされるマーケティング手法が日本とまったく異なる点です。たとえば、日本ではInstagramとTwitterがSNS集客のほとんどを占めており、Facebookはほぼ運用をしていない状況ですが、台湾ではFacebook経由の反響が大きくなっています。台湾はFacebook内のコミュニティで買い物などの情報を得ると聞いたので、今後はこうしたコミュニティ販売に強い現地のインフルエンサーと交流を図るなどして、アプローチの幅を広げていきたいです。安価にスピード重視で成果を出すことができて需要が見えれば、『台湾に再度出店しよう』『専用の自社ECを立ち上げよう』など次の展開が見える可能性もあると思っています」