社内インフルエンサーの躍進、OMO展開 店舗軸で広がる可能性
自社EC内での越境販売開始から半年程度で「注文件数は約5~6倍、売上としては約2倍の推移を見せている」と説明する武田さん。毎月右肩上がりで成長を続けており、今後は入国制限緩和なども見越して「店舗との訴求連動なども考えていきたい」と言う。
「ビジュアル訴求だけで購入してくださるお客様もいる状況ですが、触り心地などはやはり店舗で体験してもらわないとわからない部分もあります。また、購入後に日常使いして『いいね』と思っていただけた際に、次回来日前にECでリピート購入してもらえるようなアピールも必要だと思っています。
先日台湾のお客様ふたりにインタビューを実施しましたが、靴下屋を知ったきっかけについて聞いたところ、おひとりは『訪日時に店舗を訪問して』、もうおひとりは『台湾の店舗で購入したのがきっかけ』と答えていました。
当社の場合、店舗での客単価は約1,500円であるのに対し、自社ECだと約3,300円、越境ECだと約8,000~9,000円とかなりの差が開いています。生のお声を踏まえても当社にとってやはり店舗の存在意義は大きいですが、ECではレコメンドや特集の訴求などが単価アップに寄与していると考えられるので、双方の良さを活かしながら今後より良い売場作りを行っていけたらと考えています」
実際に靴下屋では、2022年6月1日にOMO型の新店舗「靴下屋 吉祥寺店」をオープンするなど、売場の進化にも積極的だ。同店はSNS連動型のデジタルサイネージを有効活用し、顧客が今求めている情報をより迅速に届けるとのことだが、武田さんは「こうした店舗展開もお客様の動きを反映したもの」だと説明する。
「ここ数年、いきなり動きが良くなった商品があると思うと、InstagramやTwitterでバズっていた。そして、店舗にその投稿や写真を持って多くのお客様が訪れる……といった動きが増えていました。まずは吉祥寺からという形ですが、こうした瞬間的なトレンドをすぐに察知し、即座に店頭に反映できる店舗作りを今年以降行っていく予定です」
また、靴下屋ではコロナ禍以前より店舗スタッフのSNS活用、インフルエンサー化にも積極的に取り組んでいる。
「全国の店舗スタッフに個人アカウントの運用をお願いしていますが、現在ではフォロワーが9.8万人いるスタッフも存在します。とくに運用に際して決まりごとなどは設けておらず、靴下にかぎらずファッションやその日に食べたランチ、自身が興味を持つことなどを好きに発信してもらっていますが、それが逆に共感につながっているのかもしれません」


社内インフルエンサーの活躍は、情報発信だけに留まらない。店頭で顧客の声を聞き、自身もファッションを楽しむ立場である視点から、直近では商品開発にも携わり、EC限定販売から店頭展開に広がったケースなどもあると言う。

「前出のNatsukiさんがプロデュースした靴下は、販売開始からわずか15分ほどで売り切れてしまうほど大きな反響がありました。Instagramの投稿を積極的に行ってくれている店舗スタッフにはファンがつき、たとえば所属店舗のリニューアル期間中に他店舗へ出勤する旨を告知すると、その店舗にわざわざ会いに来るお客様がいるほどです。越境ECでのインフルエンサー活用とは異なる軸ですが、今後も成功体験を活かしながら国内外の売場を盛り上げていきたいと考えています」