運営改善で売上3倍も!売れる仕組みを整える重要性
井澤さんのキャリアを紹介しよう。新卒で楽天市場に入社。モールのECコンサルタントの経験から、商品を見れば「どれだけ売れるか」がだいたい感覚でわかるようになったと言う。次に、スタートアップ企業に自社ECの責任者としてジョイン。ゼロからカートや倉庫を探し、サイトやシステム連携を行った。「お恥ずかしながら、モールと自社ECの勝手が違い入社当初はまったく役に立たない存在でした」。壁にぶち当たっては克服することを繰り返し、やがてその企業は上場を果たす。このような経験が、コマースメディアが一気通貫でEC事業を支援する際に役に立っている。
「運営にこだわるのは、それが一番売上アップに貢献するからです。商品情報の登録のやりかたを変えるだけで、売上が3倍になった事例もあります。売上は『見込める売上』と『積み上げる売上』の2種類に分けて考えています。前者の例がSEOや運営の仕組みを整えること、後者はメルマガやSNS投稿などです。後者が話題になることが多いのですが、コマースメディアがご支援に入る際には、まず前者を整えることから始めます。OMS(注文管理システム)の重要性も常に説いているのですが、導入してはいるものの機能を熟知し、使いこなせているEC事業者様は多くない。それはすなわち、ECのバックヤードに改善点があることを意味します」
このような根本を解決できないまま、昨年対比で大幅な売上アップを期待されるEC担当者は少なくないが、井澤さんは「それでもECの現場は頑張っている」と言う。
「経営陣のECへの理解が不足しており、上流工程の設計がうまくいっておらず、現場が間違った方向へ向かって頑張っていることが多いのです。コロナ禍で競合は増え、テクノロジーは進化し、EC担当者は経営に近いことを求められている。新しい産業なので自分で手探りで勉強していくしかない中、高すぎる期待が寄せられている。コマースメディアでは、上流工程のところからお手伝いしていきます」
井澤さんのECへの思いはとにかく熱い。その由来はどこにあるのだろう。
「はじめてのEC体験は、中学生の時で、Amazonで本を買いました。駅まで自転車で1時間かかるようなところに住んでいたため、中学生が買い物を楽しめるようなお店が近所にはありませんでした。でもECなら、世界中どこに住んでいても、誰でも欲しいものが買える、機会の平等だと心の底から感動しました」
千葉県・九十九里町で、豊かな農地に囲まれて育った井澤さんは、地域活性化に早くから関心を持っていた。その関心が、やがてECに結びつく。
「学生時代は農業活動をし、たとえば東北地方の特産品開発を経験したりもしました。そのような体験から、『結局のところ、農家が自分で売らなくては儲からない』と実感、新卒で楽天に入社したのはこのような経緯からです。実際に、モールで農作物のECを運営してみて感じたのは、応援消費や補助金頼りで商売になっていない販売者が多いということ。生鮮食品は送料などロジ周りの課題がつきものですし、生産地から離れるほど商品の鮮度は落ちます。農協や生協さんの仕組みは本当によくできていて、個別の農家が個別にEC運営を行っていては、なかなか超えられません」
ECは機会を平等に与えてくれるが、個人が商売として成り立たせるのは並大抵のことではない。だが、地域活性化のECによる解決を井澤さんはあきらめない。
「たとえば、地域密着のスーパーと提携し、地域単位のOMOができないかといったアイデアを持っています。地元の方への販売の際はリアル店舗として、ECで他の地域に発送するなら倉庫として活用できます。コマースメディアがやってきたいのは、ECではなく小売です。Shopify POSにいち早く取り組むのも、このような考えがあってのことです」