KARAKURI chatbot活用で再注文率60%増 ニッセンの事例を紹介
顧客の生の声を活かして、良質な体験構築を図るには、カスタマーサポート視点でカスタマージャーニーを描くことが必要となる。小田さんは「基本的には、マーケティングのカスタマージャーニーを描くのと同様ですが、顧客がボトルネックと感じるポイントがどこにあるかを整理し、その手前で問題解決のコンテンツや問い合わせポイントを用意することが大事」だと言う。
「現在のECサイトは、相談相手が不在であるものが多いと考えています。しかし、『このECサイトは使いやすい』と顧客に感じてもらえれば、利用頻度も向上するはずです。実店舗で販売スタッフが最適なタイミングで声をかけるように、ECサイト内でも顧客の『困った!』というタイミングに寄り添うことができれば、気軽に質問もしやすくなります。今まで問い合わせをしなかった顧客に、どうやって問い合わせをしてもらうか。当社はこうした視点から各企業の支援を行っています」
小田さんは、「顧客に合致した導線整備ができていないECサイトは、自ら機会損失を招いているのと同じ」と続ける。取り扱う商品やサービスにもよるが、カラクリは各企業のサポートを行う中で、自ら問い合わせをするアクティブカスタマーの20倍は、同一の問題を抱えている可能性が高いととらえていると言う。つまり、月間1万人の問い合わせがある企業の場合は、20万人のサイレントカスタマーを有しており、仮にひとりあたりのLTVが5万円だった場合は、気づかぬうちに100億円の機会損失をしているという計算だ。
「あくまでこれは最大値ですが、20万人のサイレントカスタマーの1%をアクティブカスタマーにできれば、1億円の売上を生むことが可能です。近年は顧客が疑問や不満をSNSに書き込むケースも存在しているため、企業が正式に窓口として設けているチャネルに限らず、ソーシャルな場に表出した声にどう対応するかも重要です」
サイレントカスタマーへの対応に着手するには、増加するカスタマーサポートへの問い合わせをカバーする対策が必要だ。そこでカラクリは顧客サポートの領域をAI活用で広げ、キャパシティーの拡張を行っている。現在、メルカリやSBI証券など約60社が同社のサービスを活用し、着々と成果につながっているそうだ。
「ニッセン様が、KARAKURI chatbotとRPAを活用して内部オペレーションの改善に着手し、オペレーターによるメール返答の約70%を自動化することに成功しています。さらに、これまでオペレーターが手動で対応していたログイン時のお困りごとに関する問い合わせについても、自動化することで返答時間をおよそ半日から平均3分にまで短縮。対応後の再注文率を44%から60%へ伸ばすことに成功しました。すみやかに対応することで売上につなげるのみならず、自動対応化によりオペレーションミスも50%削減しています。対応スピードを上げることで問い合わせ件数も増えており、これまで問い合わせに至らなかった顧客にも対応できていると見ています」
なお、エン・ジャパンが提供する採用支援ツール「engage」では、KARAKURI chatbotの活用により、有料サービスへの問い合わせ数を7.5倍、受注数を3倍にまで伸ばしている。従来は問い合わせへの返答や有料サービスの提案をすべてオペレーターで対応していたが、サービス利用に関する疑問はチャットボットへ誘導し、質問の内容を踏まえ、然るべきタイミングでオペレーターが有料サービスの提案を行うようにしたところ、営業効率もアップしていると言う。
「『コールセンター白書2020』(コールセンタージャパン編集部/リックテレコム)によると、コールセンターに問い合わせをした顧客のうち、70%近くがウェブサイトで解決できずに問い合わせをしたという結果が出ています。解決策をウェブサイト上で提示できていないから、問い合わせが寄せられる。つまり、ここで離脱が生まれている可能性もあると言えます。そこで活用できるのが、AIなどを用いた自動回答です。顧客が『わざわざ聞くほどではないけど……』と思いながらも、本当は聞きたい、知りたいと感じていた疑問が、チャットボットを導入することで見えてきます」