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コロナ禍でECは「天下一武道会」、勝ち目は「人間味あるデジタル」にあり ハイフィットの吉村さんに聞く

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2021/02/19 07:00

知らず知らずの「売り手目線」が売れないネットショップを作る

森野 何となく見えてきました。コロナによって世の中の構造が変化したというか、変わらざる得なくなり、価値観が再定義された。その結果として今まで潜在的だった顧客のニーズが顕在化してきたと。これに対応するには、やはり根っこの部分である「商売の本質」ということになりますか?

吉村 ただでさえAmazonがあらゆるものを破壊している中で、小売専業はどんどん厳しくなっているのは確かなんですよ。モノ消費からコト消費、コト消費からイミ消費と言われていますが、ここをきちんと考えないとダメだと思います。ECのお客さんは全国にいるため「甲子園」に例えられますが、今や「天下一武道会」の時代になったと考えています。従来はまったく関係なかった異業種が、横の業界に進出してくることがめずらしくありませんから。

森野 人間だけで戦っていると思っていたら、サイヤ人が出てきて、さらにはセルだとかなんだとかよくわからないものが次から次へと出てくる感じですね。わかります。

吉村 では、勝てる部分はどこなのかと言うと、僕は「人間味」の部分じゃないかと思っているんです。そもそも売れないネットショップは、「選べない」「理解できない」「迷わせる」「不安にさせる」ため、お客さんがサイト訪問時に持っていた期待が薄れていく。そんなサイトにしてしまっている原因は、知らず知らずのうちに売手目線になっているからです。

 先ほどお話ししたように、買い物という行為の価値は、「悩みごと・困りごとの解決」「新しいものを体験する」「多くの選択肢からチョイスする」というものに変わってきています。もう一度手綱を握り締めて、ふんどしの紐をちゃんと締め直して、消費者に寄り添った、お客さんに優しい、「人間味のあるデジタル」を改めて考え直す必要があります。

森野 コロナの影響でDXが進んだと言いますが、何でもかんでもデジタルにする必要もないですよね。便利に買えればいいんですから。

吉村 そうなんですよ。「デジタルが苦手な方は、アナログでもお買い物ができますよ」としてあげるのが人間味です。これまでデジタルの人たち、とくにECの人たちは、店に来てもらうために広告を打って、キャンペーンをやって、値引きして、来てもらったら買ってもらうため、今だけ、ここだけ、あなただけの訴求をやってきた。基本的には、最短でコンバージョンしてもらうことばかり考えてきたわけです。

森野 私がよく言っている「数と率しか見ていない」というやつですね。

吉村 これからその発想をどう変えていくか。よくCXなんて言いますが、要は「うちで買ってもらわなくてもいい。あなたに合ったのはこれだ思うんです」と、お客さんにニーズを達成してもらうために自分たちができることをやる。気持ちよく店を使ってもらうための顧客体験デザインが必要だということですね。「このお店で買ってよかった」と思ったら、自然と次も来てくれるわけで。忘れられないための工夫は別途必要ですが、まずはこの「気持ち良く使ってもらう」ところをちゃんと考え直さないと駄目だなと僕は思っています。

森野 気持ちよく使ってもらう。これがわかっていないというか、考えてない人が多いですよね。

吉村 売りっぱなしなんですよ。一度売ったお客さんは、金を払ってくれたからそれで終わりだと思っている。にもかかわらず、「LTVを増大させよう」なんておこがましい話なんですよ、はっきり言って。

コロナ禍で求められる新たな顧客体験デザインの発想

従来のEC 今後のEC (従来のECに加えて以下が必要)
  • 店に来てもらうために何をする?
  • 店で買ってもらうために何をする?
  • 再び買ってもらうために何をする? 
  • ニーズを達成してもらうためには?
  • 気持ちよく使ってもらうには?
  • 再び買いたいと思ってもらうには?

森野 ちょっとエキサイトしてきましたので、このあたりでお開きにしたいと思います。最後にひとこといただけますか?

吉村 ここからがおもしろいのに! まあいいか(笑)。大河ドラマの『独眼竜政宗』で、北大路欣也が演じる輝宗が渡辺謙の政宗に、こう言うんですよ。「敵の強きを見て恐れてはならん。敵の弱きを見て侮ってはならん」。これはデジタルに置き換えてもまさにそれで、デジタルを恐れてもダメだし、侮ってもダメだと思います。

森野 今日はありがとうございました。

対談を終えて(運営堂・森野)

 今起きている変化は、新型コロナウイルス感染症の流行がすべての原因のように思えますが、そんなことはなく、今まで潜在的にあった課題が顕在化してきたと言えます。吉村さんの言葉に「徐々に静かに激変している」とありましたね。前回の記事にあった3つのポイント、「ECの流れをつかむ」「顧客のニーズをつかむ」「商売の本質を学ぶこと」は変わらず重要なことです。継続して学んでいきたいですね。

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