モールでもブランドは確立できる
森野 ECでよくある質問を売上規模ごとに聞いてみようという企画です。前々回のミウラタクヤさんはひとりEC、前回のフューチャーショップさんは年商数千万円から数億円規模が対象でした。
第1回 ミウラタクヤさんの記事はこちら
第2回 フューチャーショップさんの記事はこちら
森野 今回は年商10億円以上のEC事業者からよくある質問を、坂本さんにお聞きしたいと思います。この規模になると、モールか自社ECかといった判断ではなく、どちらも運営した上でどこに注力するかだと思います。このあたりはいかがでしょうか。
坂本 年商が10億円以上の場合は、モールでの売上比率が高いはずです。モールは上手くはまったときに売上が上がりやすいですから。これがメーカーECか、仕入れ型ECかによって、打ち手が変わります。
メーカーECは自社ECでの販売が良いと思われがちですが、そんなことはありません。モールでもブランドは育ちます。世界的に有名な事例だと、モバイルバッテリーを中心に扱っている「Anker」がありますよね。このブランドはAmazon育ちです。楽天市場育ちのメーカーだと、「スカルプD」などを販売するアンファーがあります。
仕入れ型だと、モノとコトのうちコトの比率が高い場合は、自社ECが向いています。コトというのは、奥深さなどコンテンツで商品を語る余地があるということですね。
森野 なるほど。メーカーECは語ることが多いので自社ECと考えてしまいそうですが、モールでもブランドを確立できる。逆に仕入れ型ECはモールが向いているようでも、語る余地があれば自社ECでも売れると。
坂本 僕は帆船と汽船の違いという言い方もしています。モールは風が吹いているので、上手に帆を広げれば進むけれども、風が吹いていないと止まります。汽船は造るのに手間がかかりますが、安定しやすいです。その組み合わせをどうするかですね。
森野 次の質問は、SNSをやったほうが良いのか、どのSNSを選べば良いのか問題です。
坂本 ここはミウラさんと真反対になると思っていまして、SNSが上手くいっているケースはあるものの、売上に対する貢献度はあまり高くないです。コト比率が高くて共感を呼ぶなど、SNSアカウントをフォローして顧客が積極的にコンテンツを消費し続ける理由があれば、それなりに貢献するのですが。
森野 まさにその通りだと思います。ミウラさんはSNSを使ったDM営業が良いと話していましたが、ひとりEC規模ならSNSで発信するコンテンツに共感して商品が売れることはあり得ます。一方で、年商10億円以上だと当たり前にSNSを運用している前提ですし、SNS経由で急に売上が上がるわけでもないので、ちょっと難しいですよね。