2019年11月に新生「渋谷PARCO」をオープンしたPARCO。2014年から、いち早くデジタルを「店舗のサービスや接客を拡張するもの」と定義し、公式EC「カエルパルコ(現在は「PARCO ONLINE STORE」に改称)」やスマホアプリ「POCKET PARCO」などを打ち出してきた。館という場を持つ同社が考える、デジタル上でものを売る環境を整える意義とはいったい何か。
また、デジタルに取り組むことで実店舗にどのようなプラスの作用を及ぼすことができるのだろうか。パルコデジタルマーケティングの唐笠さんに話を聞いた。
顧客の「お買い物技術」が向上 一体感あるコミュニケーションは必須
はじめに、オムニチャネル推進やEC事業支援に長年携わってきた唐笠さんに、「未来店舗」を考えていくうえでのECおよびデジタル戦略の重要性を改めて聞いた。
ここで唐笠さんが指摘したのは、EC・スマホ時代における「顧客の進化」だ。ECの普及により、ここ数年実店舗に足を運ぶということの意義・価値に変容が訪れている。その一方で、インターネットとスマートフォンを手にした顧客は、さまざまなチャネルを通じてものを買う技術を高め、進化し続けている。
「僕は、お客様がものを買う技術のことを『お買い物技術』と呼んでいるのですが、これがここ数年で著しく向上しています。ECで買うだけでなく、『メルカリ』などのCtoCサービスを用いて購入したり、そうしたサービスでリセールすることを前提に買い物したりもするようになりました。お客様の買いかたが大きく変わってしまったのです。実店舗に足を運ばないと買えなかった時代は売り手側のほうがより主導権を握っていましたが、今はまったく逆です。ブランドや商品の情報、選択肢、買える場所、買いかた……買い物における主導権は完全にお客様側にあると言って良いと思います」
そうして進化した顧客に対して、企業やブランドはどのように価値を届け、コミュニケーションを取っていくのかが、これからの重要なテーマとなる。必要なのは、実店舗などのリアルチャネルとECを含めたデジタルチャネルを融合させ、ひとつの主体として顧客とコミュニケーションし、関係を深めていくことだと唐笠さんは語る。
「ひとつの主体になってお客様とコミュニケーションすることで、お客様をより深く知ることができるようになります。それによって、お客様それぞれのシーンや求めることに合わせてその都度、気の利いたコミュニケーションができるようになるのです。お客様は一貫性があって気の利いた対応やサービスを企業やブランドから受けることで、満足度が上がりロイヤリティがより高まる。それこそが継続的な関係構築につながるのだと僕は考えています」