アメリカ・エクスペディア社、ドイツ・ザランド社によるAI・機械学習の事例を紹介
続いて、顧客事例としてアメリカ・エクスペディア社のホテル予約サイト「Hotels.com」での取り組みが紹介された。同社は、41言語で90のウェブサイトを運営、年間売上はグループ全体で12億ドルを記録。取扱ホテル数は32万5,000軒を超え、アプリのダウンロード数は全世界で7,000万以上に上る。
同社は、Databricksを用いてデータ処理量を20倍に増やし、低品質や重複したデータの排除だけでなく、ユーザーが興味のあるコンテンツをパーソナライズして提供することで、CVRを大幅に改善している。
Hotels.comでは、32万以上のホテルがそれぞれ画像を投稿し、ユーザーに向けて魅力訴求を行うが、中には低品質な画像や魅力訴求に乏しいもの、重複した画像なども存在していた。また、表示される画像の順番がユーザー訴求に適していない場合もあり、同社はDatabricks上で画像分析による表示の最適化を行ったと言う。
柿崎氏は、続けて具体的な取組内容を紹介した。まずは画像分析を行い、類似画像や低品質な画像は自動的に排除。プールやジムなど施設に関するものだけをまとめるなどの最適化を行った。また、大量のデータからユーザーのプロファイルを作成し、たとえば「ベッドにこだわりがある」と分析された場合には、ベッドの写真をしっかり見せるなど、ユーザー訴求に最適と思われるものを優先表示させるようにした。さらに、興味を持って検索している宿泊先のロケーションを地図上で把握し、レコメンデーションも実施。結果、同社がコンバージョンの指標としている予約率が飛躍的に高まったと言う。
加えて、もうひとつの事例として、ドイツの大手ファッションEC「Zalando」が紹介された。ザランド社もDatabricksを統合データ分析プラットフォームとして導入し、リアルタイム顧客マーケティングを実現している。
同社は、2008年に創業。ヨーロッパを中心に18ヵ国で展開し、年間売上は4.5億ユーロを記録している。取扱商品は2,000ブランド40万種に上り、サイロ化された組織内で商品・顧客情報が分散、データサイエンティストごとに独自の分析アルゴリズムやツールが使用されているなどの課題を抱えていた。
そこで、同社はDatabricksを用いて社内のデータを収集。セキュアな環境に統合したうえで、データサイエンティストが自由に高速に分析できる環境を構築した。その結果、ユーザーのウェブサイトの行動を把握・分析し、リアルタイムなレコメンデーションを行えるようになった。従来よりパーソナライゼーションは行われていたが、改善により属性分析だけでなく、オンタイムでよりユーザーの気分に寄り添ったレコメンデーションが可能になった。これにより、バスケットサイズ(カート内の商品金額)が40%も向上したと言う。