ウェブパフォーマンス向上でコスト削減 表示速度改善がもたらす効果とは
年間の商談件数60万件、小売12万台を誇る中古車販売サービス「ガリバー」。運営事業者であるIDOMでは、20年前からウェブサイトをリアル店舗への集客・送客装置のひとつとして活用してきた。
IDOMが身を置く自動車業界は、現在100年に一度の大変革期と言われている。IDOMでも、サブスクリプションモデルやカーシェアリング、CtoC向けサービスなど新しい取り組みを行っており、さらに従来から存在する店舗を中心とした中古車販売モデル(CtoBtoC)についても、新たな戦略が求められている。
そうした中、同社は顧客とのタッチポイントのひとつとして重要な役割を担うウェブサイトについても、顧客体験向上を目指し、3年間にわたってウェブパフォーマンス改善を実施してきた。いわゆる「速度の向上」に取り組むことで、想像以上の効果が得られたと言う。流入は3年間で約2倍に増え、リードの獲得割合も2年めに15%向上している。さらに注目すべきは、2019年に25%の運用費削減に成功していることだ。
「私たちのビジネスモデルはウェブ上で購買が完結するのではなく、成約までに数回、人の介在が必要になる。そのため、コスト配分においてウェブサイトよりもリアルの比率を高めることは必然的な判断だった。ただし、コストは減らしても効果は下げない。その課題のもと、取り組みを進めた結果、費用対効果を高めることができた」と村田氏は説明した。
そして定性効果については、速度改善によって表示品質が安定し、クロールやインデックスが進むようになったことを挙げた。エラーが減ってクロールバジェットに余裕ができたことで、ページのインデックス量が増加。かつて減らしていたサイトマップも2019年秋頃に復活させ、「コンテンツが増えてもうまくデリバリーができるようになってきた」と言う。
こうした成果を得るまでに、IDOMではどのような施策にどの程度の力を注いだのだろうか。村田氏は、「最初の2年間はEFO(フォーム最適化)やLPO(ランディングページ最適化)などに注力したが、近年はチャット接客やウェブ接客などに移行している」と施策を振り返った。さらに「併行して、パフォーマンス速度改善という目に見えない領域にも注力するようになった。それが、目に見える領域にも大きく影響することを実感した」と語る。
効果的にサイトの品質改善がかなえば、余剰となった人力やコストを戦略的に他に回すことができる。同社では、コンテンツが量から質へとシフトし、Googleを活用した効果的なデリバリーを行えるようになったそうだ。これにより広告出稿量の適正化などを実現し、削減できたコストは新たな顧客接点の開発・運営費用や、店舗に直送する仕組みの構築、データオーケストレーションなどの新施策に展開している。
また、サイト品質改善が施策成果につながるということは、裏を返せば表示速度が遅いと効果発現が削がれるということでもある。村田氏も取り組みの中で「表示速度が遅い状態では、EFOやLPOの成果は十分に得られなかった」と言う。しかし、たとえばECでカゴ落ちするユーザーが多かった際に、その原因が表示速度にあるとは気づきにくい。気づくことができないからこそ、表示速度改善は常に意識すべき事項と言えるだろう。