鳴り物入りのPayPayモール Amazon・楽天に対抗できるか
最初のトピックスは、ZOZO買収で注目を浴びたPayPayモールのオープンについて。Yahoo!ショッピング出店ストアのうち、一定条件を満たした「優良店」であること、上場企業であること、企業年商100億円以上(「家電」カテゴリのみ500億円以上)であることなど、一部ストアに限って出店が許されるとあって衝撃的なリリースだったが、PayPayモールのオープンそのものについては、それほど話題にあがらなかった。「この号が発刊される12月末に答え合わせをしてほしい」と前置きをしたうえで、高木さんはPayPayモールの事業展開を予想してくれた。
「11月1日から、『PayPayモールで100億円相当あげちゃうキャンペーン』の実施が発表されました。PayPayまたはヤフーカードで支払うと、誰でも11%相当が還元、ソフトバンク『スマートログイン』もしくはワイモバイル『Enjoyパック』であれば、20%相当が戻ってくるというものです。おそらく大成功をおさめるでしょう。2019年末のキャンペーンは、あっという間に終わってしまいましたから、ユーザーも先を争って利用するのではないでしょうか」
高木さんは2019年10月末時点で、自社のクライアントのうち、Yahoo!ショッピングのみに出店しているストアと、PayPayモールに出店したストアのデータを比較。コンバージョン率や訪問率は変わらないものの、ひとりあたりの閲覧時間やPV数などが、PayPayモール出店ストアのほうが若干下がっていると言う。その原因を「PayPayモールのUIがほかの店舗に流入しやすい導線になっているため、ひとつのストアに留まらず、モール内で複数店舗をぐるぐるまわりながら滞在しているからではないか」と推測する。
「この推測が正しければ、自ストア内での回遊率が下がっても、ほかのショップからの誘導も期待ができるため問題ないです。不安要素は、PayPayモールに馴染めないユーザーが離脱すること。Yahoo!ショッピングの『5のつく日キャンペーン』のような取り組みが今のところ発表されていません。優良店としてPayPayモールに出店したストアでも、売上が落ちるリスクを分散するため、Yahoo!ショッピングに2号店を出店し直すというケースも見られます」
キャッシュレス還元 増税対策として効かず
今回の取材は増税後だったことから、すべてのモールで共通して、駆け込み需要やキャッシュレス消費者還元の成果など売上の変動が注目された。
「当社のクライアントの場合、キャッシュレス消費者還元事業の加盟店とそうでない店舗を比較したところ、売上減少率の差が1%くらいしかありませんでした。つまりこの施策が、増税後の消費の落ち込みに対してほとんど歯止めになっていないことがわかったのです」
駆け込み需要があった9月と増税直後の10月を比較すると、誰もが予想するとおり売上は下がるわけだが、高木さんは「危機的状況」と表現する。
「とくに消耗品系は、9月は昨対150%~200%。増税後の直近10日間のデータでは昨対50~60%に落ち込んだ店舗が多かったです。この現象は、2020年6月のキャッシュレス消費者還元事業が終了する際に起こるでしょう。7月の対策をこれから考えておきたいものです」