進化するアナログ施策 これからはDMも「ユーザートリガー」に
続いて大木氏は、デジタル×アナログ施策の先進的事例として、ディノス・セシールが展開するECとリアルタイムに連携したパーソナライズDMを取り上げた。これは、同社のECサイトで商品をカートに入れたものの購入に至らず「カゴ落ち」してしまったユーザーに対して、その個別の商品情報を印刷したDMをカゴ落ちから最短24時間で発送するというものだ。通常のEメールによるカゴ落ちフォロー施策に比べて約20%のリフトアップ効果を生んでいるという。
鈴木氏はこれを「次世代DM」と評して、その革新性に注目している。
「従来のDMは、発信するタイミングを事業者側が決める『事業者トリガー』でした。それに対してデジタルの施策は、たとえばログインなどのユーザー行動を起点にコンテンツをパーソナライズするといった『ユーザートリガー』が当たり前です。
このディノス・セシールのDMが画期的なのは、カゴ落ちというユーザーの行動がタイミングのトリガーを引く『ユーザートリガー』であるところ。加えて、バリアブル印刷技術やシェアリングエコノミーのビジネスモデルによって、従来の印刷では難しかったリアルタイムのパーソナライズや印刷部数の大幅な変動にも対応しています。これまでデジタルでしかできなかったことをアナログの印刷で実現可能にした、まさに『次世代DM』と言えるでしょう」
渡辺氏も、この次世代DMには大きな期待を寄せている。
「私たちのようにマルチブランド展開している事業者にとっても、強力な武器になると感じています。こうしたソリューションを活用すれば、DMや同梱リーフレットでも顧客に合わせて25ブランドを縦横無尽に組み合わせたり、個別のメッセージを入れ込んだりしながら、より効果的なコミュニケーションが図れるようになるのではないでしょうか」
効果的なデジタル×アナログ施策のために「PDCAを回し続ける」
デジタルとアナログの組み合わせをどのように実践していけばよいのか。鈴木氏によれば、結局のところは自社でテストして検証し、PDCAを回していくしかないという。
「デジタルとアナログを『組み合わせる』『融合させる』などと言っても、現状では両者間で組織や人、予算なども分断されているケースがほとんどです。両方の知見を備えた企業や人はなかなか見つからないでしょう。やはり自社・自分でトライして、PDCAを繰り返していくしかありません。仮に失敗しても、そこから何らかの学びを得られます。『どうやるか』も大事なのですが、それよりも『まずはやってみる』ということが重要です」
鈴木氏は最後にそう語り、セッションの結びとした。