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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzine Day 2018 Autumn レポート(AD)

ECにもDMが効く!? デジタルとアナログを組み合わせたマーケティングのあり方

 マーケティングの分野では昨今、デジタルとアナログを組み合わせた施策が注目され、実際に取り組む企業も増えている。「ECzine Day 2018 Autumn」でも、「デジタル×アナログから生み出す価値とは何か?」と題したパネルディスカッションを実施。イーリスコミュニケーションズ Co-Founder/エグゼクティブ プロデューサー 鈴木睦夫氏とアダストリア WEB事業本部シニアマネージャー 渡辺元氏が登壇し、博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 大木真吾氏がモデレーターを務めた。

デジタル課題の突破口として期待されるアナログ施策

 メールマガジン(以下、メルマガ)やフォローアップメール、レコメンド、コンテンツのパーソナライゼーションなど、ECサイトの運営においてはさまざまなマーケティング施策が必要となる。しかし、こうしたデジタル型のアプローチだけでは十分な効果を得るのが難しくなりつつある。

 モデレーターの大木氏はその一因として、「デジタルではリーチできない顧客の存在」を挙げる。

「たとえばEメールを開封してくれる人、Eメールはゴミ箱行きでもSNSでリーチできる人などいろいろなパターンがありますが、そもそもEメールを含むオンラインでの接触を望んでいない、さらには拒絶しているという人も多数存在します」

オンラインでの接触を求めていない層が一定数存在する
オンラインでの接触を求めていない層が一定数存在する

 その一方で、近年ではダイレクトメール(以下DM)に代表される従来型の「アナログ」なマーケティング手法を取り入れ、デジタルマーケティングと組み合わせた施策により成果を上げる事例が注目されている。大木氏によれば、実際にこうした「デジタル×アナログ」を組み合わせた施策に取り組む企業が年々増加しているという。

「デジタルマーケティングの課題に対してアナログ施策がその突破口になるのか? デジタルとアナログの組み合わせで押さえるべきポイントは何か?──本日はこのあたりを中心にお話しいただきたいと思います」と、大木氏はテーマを投げかけた。

DMとEメールを組わせたコミュニケーションで効果を上げる

イーリスコミュニケーションズ株式会社 Co-Founder / エグゼクティブ プロデューサー 鈴木睦夫氏
イーリスコミュニケーションズ株式会社 Co-Founder / エグゼクティブ プロデューサー 鈴木睦夫氏

 イーリスコミュニケーションズの鈴木氏は、前職の日本郵便時代にさまざまな企業との間でデジタル施策とアナログ施策(DM)の融合について実験を行ってきた。そこから得た知見として、鈴木氏はまず、コミュニケーションの手段としてEメールよりDM、そしてDM単体よりもEメールとDMの組み合わせのほうがリーチ率が上がることを挙げた。

「ターゲットを3つのクラスタに分け、それぞれにEメール、DM、DM+Eメールを送付して反応を計測するというテストを、BtoB、BtoCを問わず多様な企業と一緒に実施してきましたが、いずれも同じ結果になりました」(鈴木氏)

 また、DMとEメールの組み合わせでは送付する「順番」も重要であり、DMを先に送ったほうがより効果が高くなるという。実際に富士フイルムと行った実証実験では、DMの後にEメールを送付(A)、Eメールの後にDMを送付(B)、Eメールのみ2回送付(C)という3パターンで比較したところ、注文率(コンバージョン)はAが14%、Bが12%、Cは3%という結果となった。

DM→Eメールの順に送付すると最も効果が高くなる
DM→Eメールの順に送付するともっとも効果が高くなる

「まず、DMのほうがEメールよりも開封率が高いという特性の違いがあります。また、Eメールは一度開封されて読まれたとしても、すぐに他のメルマガなどに埋もれて忘れられてしまうことが多く、反応期間が短いんです。反応期間の長いDMが記憶に残っている間に『お手紙届いていますか?』というフォローメールを送れば、そのEメールの開封率も上がります。さらに、DMで案内されているウェブサイトに手動でアクセスするのが面倒で後回しにしていた人も、Eメール内のリンクから簡単にアクセスできるようになるので、より高い効果が期待できます」

DMは休眠顧客をアクティブ化する有効な手段となり得るか

株式会社アダストリア WEB事業本部 シニアマネージャー 渡邉元氏
株式会社アダストリア WEB事業本部 シニアマネージャー 渡辺元氏

 デジタルではリーチできない顧客に対して、アナログ施策はどれだけ効力を発揮できるのか。これについては、「グローバルワーク」「ニコアンド」など国内外で25ブランド、約1,300店舗を展開するファッションカジュアル専門店チェーンのアダストリアが興味深い実験を行っている。

 同社WEB事業本部シニアマネージャーの渡辺氏は、その内容を次のように説明する。

「休眠顧客をアクティブ化するという目的に対して、DMの有効性を検証する実験です。直近1年間にECおよび店舗での購入がなく、かつEメール受信を許可されていないお客様にDMを送り、送付後の約1ヵ月間でどれだけの方がアクションを起こすかを計測しました」

 ターゲットとしてEメールで接触できない休眠顧客のうち、30代半ば~40代を中心としたアッパー層と、10代後半~20代半ばが中心のヤング層の2グループを抽出。DMの内容は、各層に適したブランドロゴと、ECサイトへ誘導するQRコード、「税込み5,000円以上購入で500円引き」のクーポンが印刷されたものだ。

休眠顧客にクーポン付きDMを送付して、アクティブ化する顧客数を検証
休眠顧客にクーポン付きDMを送付して、アクティブ化する顧客数を検証

「結果として、DM起因の購入者数は全体のうちシェア約2%、DMを送付していないユーザーと比較したアクティブ率は約200%に改善しました。施策のコストに対して短期回収は難しく、一度起こした後に継続購買につなげていくためにはその次のシナリオを準備する必要がありますが、『DMを使うことでデジタルではリーチできないお客様にアクションを起こさせることができる』というのは良い学びになりました。また、休眠顧客以外でターゲットやタイミング、訴求内容を編集してリトライすることで、DM施策がより有効な手段になり得ると考えています」(渡辺氏)

 同社では今後の取り組みとして、ロイヤルカスタマー向けのDM、単一ブランドからのオファーやブランドの組み合わせをパーソナライズしたDMの効果検証なども検討しているという。

進化するアナログ施策 これからはDMも「ユーザートリガー」に

 続いて大木氏は、デジタル×アナログ施策の先進的事例として、ディノス・セシールが展開するECとリアルタイムに連携したパーソナライズDMを取り上げた。これは、同社のECサイトで商品をカートに入れたものの購入に至らず「カゴ落ち」してしまったユーザーに対して、その個別の商品情報を印刷したDMをカゴ落ちから最短24時間で発送するというものだ。通常のEメールによるカゴ落ちフォロー施策に比べて約20%のリフトアップ効果を生んでいるという。

 鈴木氏はこれを「次世代DM」と評して、その革新性に注目している。

「従来のDMは、発信するタイミングを事業者側が決める『事業者トリガー』でした。それに対してデジタルの施策は、たとえばログインなどのユーザー行動を起点にコンテンツをパーソナライズするといった『ユーザートリガー』が当たり前です。

このディノス・セシールのDMが画期的なのは、カゴ落ちというユーザーの行動がタイミングのトリガーを引く『ユーザートリガー』であるところ。加えて、バリアブル印刷技術やシェアリングエコノミーのビジネスモデルによって、従来の印刷では難しかったリアルタイムのパーソナライズや印刷部数の大幅な変動にも対応しています。これまでデジタルでしかできなかったことをアナログの印刷で実現可能にした、まさに『次世代DM』と言えるでしょう」

 渡辺氏も、この次世代DMには大きな期待を寄せている。

「私たちのようにマルチブランド展開している事業者にとっても、強力な武器になると感じています。こうしたソリューションを活用すれば、DMや同梱リーフレットでも顧客に合わせて25ブランドを縦横無尽に組み合わせたり、個別のメッセージを入れ込んだりしながら、より効果的なコミュニケーションが図れるようになるのではないでしょうか」

効果的なデジタル×アナログ施策のために「PDCAを回し続ける」

 デジタルとアナログの組み合わせをどのように実践していけばよいのか。鈴木氏によれば、結局のところは自社でテストして検証し、PDCAを回していくしかないという。

近道はなく、地道にPDCAを回していく必要がある
近道はなく、地道にPDCAを回していく必要がある

「デジタルとアナログを『組み合わせる』『融合させる』などと言っても、現状では両者間で組織や人、予算なども分断されているケースがほとんどです。両方の知見を備えた企業や人はなかなか見つからないでしょう。やはり自社・自分でトライして、PDCAを繰り返していくしかありません。仮に失敗しても、そこから何らかの学びを得られます。『どうやるか』も大事なのですが、それよりも『まずはやってみる』ということが重要です」

 鈴木氏は最後にそう語り、セッションの結びとした。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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