購買行動の姿勢を形成するふたつのパターン
「周辺経路」と「中心経路」
このように、広告・販促訴求によりユーザーへの伝え方を整理する際に役立つものとして、「精緻化見込みモデル(Elaboration Likelihood Model:ELM)」という考え方があります。心理学者のリチャード・ペティー氏とジョン・カシオッポ氏が著書『Attitudes and Persuasion』の中で1983年に提唱しており、発表からある程度の年月を経た今も、定評を得ています。
その概略は、人が広告や販促などのメッセージに接した時、それらの情報を処理して理解するパターンには、「周辺経路」と「中心経路」の2種類があるということです。
「周辺経路」とは、いわばフィーリングです。詳細な検討は行わずに、「楽しそう」、「幸せになりそう」といった前向きなイメージを想起し、その「手掛かり」に結び付いて形成される反応といえます。広告に遭遇したときでいえば、好き嫌いなどの簡略的な検討によって、購買行動への態度が形成されるケースです。この場合、態度形成は緩やかなものであり、容易に変容が起こります。競合他社のメッセージにも左右されますし、やっぱり気のせいだったのでは?と決断が簡単に翻ることもあります。
対して「中心経路」は、念入りな比較検討によって行われます。内容について真剣に向き合い、あらゆる角度、論点から主張をじっくりと考えて、関連情報をできる限り集め、論理的思考により答えを導き出そうとします。この思考パターンによって、自ら深く考えた末にたどり着いた結論は、いわば自らの分身ともいえるもの。そう簡単に、競合からのメッセージや反証反論に屈したり、惑わされたりすることもありません。(もちろん、事実として自社の製品・サービスが競合より劣っていても、それをごまかせるという話ではありません)