分析のポイントは「色々な選択肢を見せること」と「LTV」
――小川さんにお伺いします。最初にdショッピングのサイトの見直しをされる際に、どこを改善した方がいいと思われましたか?
小川(F) そもそも見たいデータが見られていなかったので、分析の難易度が非常に高かったんです。キャンペーンがどれぐらい効果を上げているかが見づらかったり、社内でレポートを出すのに非常に苦労していたり。サイトそのものの課題というよりは、そこをまずは変える必要があると思いました。
――EC事業者でも分析データを日々チェックしている方がたくさんいらっしゃるかと思います。データを分析する際のポイントはありますか?
小川(F) ECにおけるデータ分析のポイントはふたつです。ひとつは「色々な選択肢を見てもらうこと」。定期的に水を買います、などの場合はいいのですが、様々な選択肢や買い物体験そのものをECで楽しんでもらいたいと思ったときには、お客様が訪れた時に、「ひとりが何種類の商品を見ているか」ということが重要です。それは間違いなく、購入率と関係があります。
商品一覧ページ、詳細とレコメンドを含め、いかに行き来しやすくなっているか、適切なレコメンドができているか。見て回る楽しさをオンラインでも再現できると、買うだけでなく「楽しかった」という体験も提供できて、次の購買につながりやすいのではないかと思います。
もうひとつはLTVの考え方です。つまり、いかに継続的にサイトを訪れてもらうか。dショッピングのような総合通販は競合他社が多くいるので、どのタイミングでどういうコミュニケーションを取るか、月に何回お客様が来てくれるか、というところがとても大事です。
そのためには、メール、DMなど色々なものを使ってとにかく目に触れてもらう。ですので、複数回来ている方、長く使っていただいている方、たとえば3ヵ月連続でサイトに来た方というのは、どこから来て、どういう行動をしているか、というのを見ているケースが多いですね。
豊田(D) 今回のサイトのリニューアルで、小川さんをはじめ数人で商品詳細の見直しをしてもらい、カテゴリーごとに重複していた商品もなくなり見やすくなりました。商品詳細から戻る時、「行き止まりにならないように」ということをすごくご指摘いただきました。
小川(F) たとえば商品詳細があるとしたら、画像、値段、カートに入れる、お気に入りなど、そのページが本来必要な機能をとりあえず作ってしまいがちです。ですが、本来、他のジャンルのものも見てみたいのか、送料について知りたいのかなど、「見た人が次に何をしたいのか」を考えたコンテンツも含めて作るべきです。そこの観点が抜けてしまうと、見終わったときに買うか買わないかのみになってしまい、それ以外の行動に繋がりません。
豊田(D) それを受けて、ユーザーが見ているカテゴリー、見ている商品と同一のカテゴリーの商品を出すようにしました。それから一覧へ戻れるような導線を設置した結果、PV数が伸びて、コンバージョンも改善されました。
小川(F) また、サイトのリニューアル後はだいたい最初は評価が下がるので、新規の方の反応を見るようにしています。
あとは滞在時間。ユーザーのことだけを考えると、滞在時間は短い方がいいんです。商品を色々見ていて滞在時間が長くなるのはいいのですが、そもそも商品にたどり着く時間は短い方がいい。本来トップページは目次ですから、滞在時間はもっとも短くあるべきです。そこから自分の探しているものを検索するなり、ランキングを見るなり、商品を見ている時間を増やすというところを評価するべきだと思っています。