ライブコマースならではの新しい価値とは
2社の紹介が終わったところで、セッションはディスカッションに移っていく。「ライブコマースはショッピングを変えたのか」というテーマに対して椙原氏は、「日本ではまだ変わっていないと思う」と前置きしたうえで、ライブコマースと従来のECの違いについてこう話した。
「ネットショッピングは、自分でECサイトに行き、商品を自分で検索して、本当はその時に買わなくてもいいタイミングなのに、自分で自分の背中を押して決済ボタンを押すという行為だと思うんです。でも僕らがやっているライブコマースだと、別に何かを買いに来たわけじゃないけれど、憧れのAちゃんが出ているから見に来て、憧れのAちゃんが紹介している商品だから買う。
商品に対する不安をぶつければ、インフルエンサーさんから回答がもらえるので、購入時に誰かが背中を押すということがライブコマースでは可能になる。そう考えると、かなりポテンシャルのあるビジネスなんじゃないかと思っています」
そんなライブコマースのポテンシャルを見越してか、冒頭でも述べた通り、メルカリ、BASE、Yahoo!ショッピングなど続々と企業が参入している。こういった企業の参入についてはどう見ているのだろう。
「我々とは軸が異なっていると思っています。サービスを立ち上げる前、EC系のプラットフォーマーがユーザー向けのツールとしてライブコマースの機能を提供するだろうというのは想定していましたので、そもそもLive Shop!をやるときにCtoCの機能開発は優先しないと決めていました。僕らは番組自体をしっかりと企画し、インフルエンサーさんに出演していただいたうえで、普通の固定カメラや自撮りではできないようなカット割りやCG合成などを行っています」
その点が同じ土俵ではないと思う理由です、と椙原氏は付け加えた。
最後に菅野氏、椙原氏はライブコマースの価値や今後の可能性について語り、本セッションを締めくくった。
「インターネットの良さって、空間的・物理的な壁を突破することだと思います。これまで店頭でしか実現されなかった『接客』や『POP』のような体験をスマートフォンで代替しうるのが動画コマース・ライブコマースだと考えています。技術的な壁はすでに乗り越えられているので、これからさらに大きな波が来ると思っています」(菅野氏)
「どれくらいのフェーズのEC事業者さんかによっても違うと思いますが、たとえば個店などをやっていらっしゃるところだったら、自分たちの売っている商品に対する熱意とか思いとか、絶対あると思うんですよ。だからそのよさをライブでしっかり伝えられれば、普通のECで売るのとは全然違う人達に売れると思うので、そこをやっていくべきなのではないかと思っています。
ECの場合だと誰も説明してくれないけれど、店頭に行くといろいろ聞くことはできる。でも店頭で店員さんに声をかけるのは憚られるし、店員さんと5分でも話し込んでしまえば買わなきゃいけない感もあるし、それは億劫、みたいな。
それがライブコマースだと、これってどういうコーデをすればいいの?というような質問をすごい勢いでみなさん聞くんですよね(笑)。だから、店頭で店員さんから説明を受けるよさとECですぐ買えるよさをあわせていけば、ライブコマースならではの価値が生まれるんじゃないかなと感じています」(椙原氏)