在庫を持ち、ライブコマースで販売してみて感じたこと
続いてファイブ株式会社代表取締役の菅野氏が、創業の経緯について語った。
「僕らは3年前に創業して、スタートはスマートフォン向けの動画広告の会社でした。現在は動画広告プラットフォームを開発・運営していて、主な配信先は様々なアプリメディアです」
そんなファイブも今年ライブコマースサービス「Interface by FIVE」を開始した。動画広告からスタートしたファイブが、なぜライブコマースを始めたのか。
「縦動画や全画面で映像を流す機会が動画広告をやっている中でもかなり増えてきました。ユーザーに全画面・フルスクリーンを自然な文脈で開いてもらうと非常にエンゲージメントが高いのが数値でわかりました。であれば、ここで商品説明ができたり、モノが売れたりするのではないかと考えました」
ファイブが行った特徴的な取り組みのひとつは、映像の中だけで商品の購入まで完了する、というものだ。アプリ内に動画コマースを設置し、タップするとそれが全画面で表示される。
「その映像の中でさらに動画フォームが立ち上がる仕様にしました。ウェブページに飛ばなくても、映像の上でユーザーさんが情報を入力して、その場で欲しければ購入できる。決済の仕組みも、後払いも含めて複数対応しました」
また新しいチャレンジとして、在庫をもち、それをライブコマースで販売するという取り組みも行っていた。
「ティーンエージャーがたくさん集まっているアプリで、浴衣の特集ページやコンテンツを作るところから、自分たちで仕入れて販売をしてみる、というところまでをやってみました。同じ浴衣でも見方や訴求の方法を変えながらここ数か月くらいチャレンジとしていましたが、動画コマースでモノを売ることがどれだけ大変か痛感した、というのが正直なところです」
大変だったと話す菅野氏だが、一番苦心したところはどこだったのだろうか。
「ユーザーさんがものを買いに来ているモチベーションかどうか、というところですね。フルパッケージでコンテンツや特集を作ったとしても、なかなか購買意欲をかきたてるところまでいくのはハードルがあると感じました。スマホのアプリという特性上、比較的若いユーザーさんが多く、決済が本人ではなく保護者であるケースも多かった。そうなった場合の決済に至るまでのハードルはかなり高いと思います」
だがライブコマースという分野に難しさを感じただけではない。サンプリングについては「すごく相性がいい」のではないかという。
「サンプリングは非常に大きな可能性を感じました。たとえば、ひとつの事例として、デオドランドスプレーのサンプリングは、動画を見てからサンプル品の配送を希望するユーザーが25%ほどいました。サンプリングのキャンペーンとしてのCVR25%はとても高い数字ではないかと思っています。ユーザーが喜ぶということは、配信先のメディアさんも喜ぶということなのでこの点でも手応えを感じました」
ファイブが実際に在庫をかかえて販売する、という挑戦をしたことは、ライブコマースの導入を検討しているEC事業者にとって、非常に意義深いことだったのではないだろうか。