ウォルマートが30億ドルで買収した話題のECサイトもAzureを採用
Azureを導入しているECサイトの事例としては、Jet.comがある。かつてDiapers.comなどの有力ECサイトをAmazonに売却したEC業界のキーパーソンであるMarc Lore氏が2014年に立ち上げた、日用品などを扱うマーケットプレイス型ECサイトだ。その経緯からAmazonキラーとも呼ばれ、スタート時から注目を集めた。2016年8月にはウォルマートに30億ドルで買収されたことで、さらに話題となっている。
Jet.comのサービスの特徴は、ユーザーがカートに商品を追加するたびに個々の商品価格が変動することだ。独自の価格設定エンジンにより、注文対応店舗や配送方法など最もコスト効率のよい条件を自動的に選択して瞬時に再計算し、最適化した価格を表示する。その複雑な処理を支えるプラットフォームとして、Azure Web Apps(Webアプリケーションサーバー)やAzure Cosmos DB(分散データベース)などが採用されている。
平岡氏はJet.comのサイト画面をスクリーンに映し、実際に商品をカートに入れてリアルタイムに価格が変動する仕組みなどを説明。また、同社CTOのMike Hanrahan氏のコメントなどを紹介した。
『Azureの持つ数多くのサービスとツールを活用できたことで、わずか12か月で本格的なeコマースマーケットプレイスになることができました』(Mike Hanrahan: CTO)
●Jet.com事例詳細「e コマースの挑戦者が首位の座を見据え、Microsoft Azure で運営」
Azureでレガシーシステムのモダナイゼーションを実現
もう1つの事例として、平岡氏は富士フイルムイメージングシステムズが提供する法人向けクラウド型ファイル管理・共有サービス「IMAGE WORKS」を紹介した。
IMAGE WORKSのシステムはもともとオンプレミス(自社保有システム・自社運用)で構築。2006年のサービス提供開始から10年を経て、開発・運用保守の負荷増加や属人化、処理パフォーマンスの低下、拡張性不足などの課題が顕在化してきた。そこで2016年に、サービス提供基盤の刷新を決定。Azureを採用してPaaS環境へ移行することで、前途のようなさまざまな課題を解決できたという。
同サイトでは1日の登録データ量が約1TB、リクエスト数は約500万回、ピーク時のトラフィックは約800Mbpsにも及ぶ。Azureを活用したシステム刷新により、スケーラブルかつ高速な仕組みでこうした膨大なリクエストに応えることが可能となった。なお、新システムへの移行は約6か月で完了している。
ECサイトとは少し毛色が異なるが、PaaSを活用したレガシーシステムのモダナイゼーションとして興味深い事例だ。
●IMAGE WORKS事例詳細「Microsoft Azure の PaaS を最大限に活用したモダナイゼーションを実施。Azure DocumentDB や Azure Functions を有効に利用することで、サービスの安定性と拡張性、利便性を飛躍的に向上」
「PaaSによってシステムの運用コストを削減できれば、その分、より多くのリソースを新規サービスの開発などに使えるようになります。これからECサイトの立ち上げを考えている方も、すでに運用中で課題に直面している方も、ぜひPaaSの活用をご検討ください」
平岡氏は最後にそう呼びかけてセッションを結んだ。