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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECzine Day 2017 KANSAI&Autumnレポート (AD)

急激なトラフィック変動にも柔軟に対応!ECサイトの運用課題をAzureで解決

 従来はECサイトのシステムを自社で構築・運用するか、EC専用の機能をサービスとして利用する形態(SaaS)が一般的だったが、昨今ではPaaSと呼ばれるクラウド上のシステム基盤を活用して独自のサービスを稼働させるケースも増えている。「ECzine Day 2017 Autumn」では、日本マイクロソフトの平岡一成氏が同社のPaaS「Microsoft Azure」を活用したECサイト構築のメリットについて、国内外の事例とともに紹介した。

大きな負担となるECサイトのシステム運用

日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 クラウドソリューションアーキテクト
平岡一成氏

 前職では大手EC企業でバックエンドシステムの開発・運用に携わっていた日本マイクロソフトの平岡氏。そうした自身の経験もふまえ、まずはECサイトのシステム運用における課題について解説した。

 ECサイト運営にあたっては、商品の受発注や在庫管理、顧客サポート対応、各種キャンペーン立案・実施など、さまざまな業務が必要となる。こうした「ショップ」としての本質的な業務のほかに大きな負担となっているのが、サーバーの維持管理や不具合対応などのシステム運用業務だ。

 ECサイトに限った話ではないが、一般的にITシステムは新規開発・構築時よりも稼働後に発生するコストのほうが大きい。平岡氏は、企業情報システムの運用管理に関する実態調査(日経BP社『ITpro』より)や平成28年度政府情報システム投資計画(内閣官房『ITダッシュボード』より)のデータを提示し、運用・保守コストが75%以上を占めていることを強調した。

企業のIT関連コストの内訳

 「ほとんどの企業が新規開発に十分な予算を確保できず、なかなか思うようなスピードで新たな事業やサービスを展開できないのが実情です」(平岡氏)

 システム運用業務の内容としては、サーバーの監視、セキュリティリスクへの対応、サーバースペックや台数の調整などが挙げられる。これらはもちろんECサイトの運用においても共通する業務であり、いずれも人的コストは大きい。

 また、こうした運用業務に割り当てる人材が不足しているケースも多い。そのため業務が属人化しがちで、「万一の障害時などに対応が大幅に遅れてしまうリスクなども懸念されます」と平岡氏は指摘する。

PaaSを活用したECサイト構築で運用負荷を大幅に軽減できる

 このようなシステム運用の課題を解決するうえで有効なのが、PaaS(Platform as a Service)の活用だという。PaaSとは、サーバー、OS、ソフトウェア(ミドルウェア)の機能を従量課金で利用できるクラウドサービスだ。

 「PaaSを活用してECサイトを構築すれば、サーバーの稼働監視やOSのセキュリティパッチ適用などは不要となり、運用負荷を大幅に軽減できます。システムの基盤となるプラットフォームはクラウド側で提供・管理しているので、ユーザーによる管理が必要なのは、その上で稼働するECのアプリケーションや各種機能のみ。つまり、システム運用の中でも本来最も注力すべき部分に限定されます」(平岡氏)

PaaSでユーザー側が管理するのはアプリケーションより上のレイヤーのみ

 EC分野におけるクラウドサービスとしては、ECに必要な機能そのものをサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)も広く利用されている。PaaSとSaaSの違いとしては、自由度の高さが挙げられるだろう。カスタマイズの余地が少ないSaaSに対して、PaaSでは選択したOSやミドルウェア環境に対応する範囲で好きなECパッケージを導入したり、独自にECアプリケーションを開発することも可能だ。

マイクロソフトが提供するPaaS「Azure」とは

 マイクロソフトでは、PaaSを中心としたクラウドサービスとして「Microsoft Azure(以下Azure)」を提供している。平岡氏はAzureの特徴の1つに、リージョン(1つ以上のデータセンターを含む地理的に離れた範囲・領域)の多さを挙げた。

 「Azureは全世界で42のリージョンがあり、これはほかのどのクラウドプロバイダーよりも多い数です。日本国内でも、東日本と西日本に2つのリージョンを有しています」

 リージョン数は選択肢の幅広さだけでなく、大規模災害に備えた可用性の確保しやすさなどを測る1つの目安にもなるだろう。国内に2つリージョンがあれば、冗長化構成のために海外リージョンを使う必要もなく、ネットワークレイテンシの面でも有利になる。

 また、Azureの実績としては1か月あたり12万件のペースで新規ユーザーが増えており、「フォーチュン500」企業の約90%に利用されているという。

日本国内では東日本と西日本の2つのリージョンにAzureのデータセンターを配置

予測できないトラフィックの変動にも柔軟に対応可能

 PaaSをはじめとしたクラウドサービスを利用する代表的なメリットとして、スケーラビリティがある。自社でシステムを構築する場合、将来的な成長を予測してサーバーのスペックや台数を決める必要があるが、クラウドなら最小限の規模でスタートし、必要になった時点で必要な分だけサーバーなどのリソースを増強していけばよい。

 また、Azureではこうした長期的な変動だけでなく、ECサイトでは比較的起こりやすい「スパイク」と呼ばれるような急激なトラフィック増加にもスムーズに対応できる。

 「Azureの自動スケール機能を使えば、負荷に応じて自動的にサーバーリソースを増減させることが可能です。たとえば最近では、著名人のSNSなどで取り上げられて拡散され、普段からは考えられないレベルのアクセスが集中的に発生することもあり得ます。そのような場合にもECサイトのレスポンス低下やダウンを防ぎ、せっかくのチャンスを有効に活かせるようになります」(平岡氏)

自動スケールで急激なトラフィック増加に対応しながらコストも削減

 クリスマスや年末商戦のキャンペーン前後などもトラフィックは大きく変動するので、こうした機能があれば安心だろう。もちろん課金は使った分、使った時間のみ。平岡氏によれば、ピーク時に対応できるだけのリソースを固定的に確保する場合に比べて、自動スケールを活用した場合はインフラコストを7割ほど削減できるという。

ウォルマートが30億ドルで買収した話題のECサイトもAzureを採用

 Azureを導入しているECサイトの事例としては、Jet.comがある。かつてDiapers.comなどの有力ECサイトをAmazonに売却したEC業界のキーパーソンであるMarc Lore氏が2014年に立ち上げた、日用品などを扱うマーケットプレイス型ECサイトだ。その経緯からAmazonキラーとも呼ばれ、スタート時から注目を集めた。2016年8月にはウォルマートに30億ドルで買収されたことで、さらに話題となっている。

 Jet.comのサービスの特徴は、ユーザーがカートに商品を追加するたびに個々の商品価格が変動することだ。独自の価格設定エンジンにより、注文対応店舗や配送方法など最もコスト効率のよい条件を自動的に選択して瞬時に再計算し、最適化した価格を表示する。その複雑な処理を支えるプラットフォームとして、Azure Web Apps(Webアプリケーションサーバー)やAzure Cosmos DB(分散データベース)などが採用されている。

 平岡氏はJet.comのサイト画面をスクリーンに映し、実際に商品をカートに入れてリアルタイムに価格が変動する仕組みなどを説明。また、同社CTOのMike Hanrahan氏のコメントなどを紹介した。

 『Azureの持つ数多くのサービスとツールを活用できたことで、わずか12か月で本格的なeコマースマーケットプレイスになることができました』(Mike Hanrahan: CTO)

Jet.comの概要
Jet.com事例詳細「e コマースの挑戦者が首位の座を見据え、Microsoft Azure で運営」

Azureでレガシーシステムのモダナイゼーションを実現

 もう1つの事例として、平岡氏は富士フイルムイメージングシステムズが提供する法人向けクラウド型ファイル管理・共有サービス「IMAGE WORKS」を紹介した。

 IMAGE WORKSのシステムはもともとオンプレミス(自社保有システム・自社運用)で構築。2006年のサービス提供開始から10年を経て、開発・運用保守の負荷増加や属人化、処理パフォーマンスの低下、拡張性不足などの課題が顕在化してきた。そこで2016年に、サービス提供基盤の刷新を決定。Azureを採用してPaaS環境へ移行することで、前途のようなさまざまな課題を解決できたという。

 同サイトでは1日の登録データ量が約1TB、リクエスト数は約500万回、ピーク時のトラフィックは約800Mbpsにも及ぶ。Azureを活用したシステム刷新により、スケーラブルかつ高速な仕組みでこうした膨大なリクエストに応えることが可能となった。なお、新システムへの移行は約6か月で完了している。

 ECサイトとは少し毛色が異なるが、PaaSを活用したレガシーシステムのモダナイゼーションとして興味深い事例だ。

IMAGE WORKSの概要
IMAGE WORKS事例詳細「Microsoft Azure の PaaS を最大限に活用したモダナイゼーションを実施。Azure DocumentDB や Azure Functions を有効に利用することで、サービスの安定性と拡張性、利便性を飛躍的に向上」

 「PaaSによってシステムの運用コストを削減できれば、その分、より多くのリソースを新規サービスの開発などに使えるようになります。これからECサイトの立ち上げを考えている方も、すでに運用中で課題に直面している方も、ぜひPaaSの活用をご検討ください」

 平岡氏は最後にそう呼びかけてセッションを結んだ。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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