売上高営業利益率、驚異の27%前後で推移するディップ
人材を求めたい企業と働く場を求める人材を結びつけることを生業としているのが、人材サービス企業だ。人材派遣や人材紹介など求人企業と求職者のマッチングを主業務とするわけだが、世界規模で展開しているリクルートホールディングス(HD/6098)やパーソルHD(2181)といった大手から、売上高が100億円を切る中堅中小までさまざまだ。ネットでの展開を専業とする企業も少なくない。
売上高に占める本業による稼ぎを示す営業利益の割合、いわゆる売上高営業利益率でいえば、ネットによる展開を主力としている企業のほうが高い傾向にある。
5%台から6%台のリクルートHDやパーソルHDに対して、ネット主力のディップやエン・ジャパン(4849)、インターワークス(6032)、アトラエ(6194)の売上高営業利益率は20%台での推移である。ネットが主力の企業は、人件費の負担などで身軽な経営をし易いということだろう。
一方、ネットを主力としている人材サービス企業は、情報誌などの紙媒体主力からの転身組や新興企業が多いだけに、収益基盤の強化が課題。新規事業に着手するものの、想定通りに進まない例も少なくないようだ。
17年2月期の売上高は330億円。5期前の12年2月期114億円との比較では3倍に迫るように、売上高を急伸させているのがディップだ。ネットによるアルバイト求人情報の「バイトル」を中心に、派遣社員求人の「はたらこねっと」や正社員求人の「バイトルNEXT」などを展開。売上高営業利益が27%前後で推移しているように、人材サービス企業としては、営業利益率がトップ級でもある。
同社のビジネスモデルは、シンプルだ。企業(クライアント)に求人広告の提案を実施して「OK」となれば掲載料を受け取って求人広告をサイト内に掲載し、求職者に情報を提供するというものである。もちろん、利便性を高めるために新機能の開発も推進。求人企業が、応募情報などから応募確率が高い求職者へ「スカウトメール」を送信できる、といったサービスの提供も実施している。
ディップ(単体ベース)の経営状況
収支内訳も見てみよう。原価や販管費で最も負担率が高いのが広告宣伝費だ。サイトの認知度アップやサイトへの集客は、広告に依存していると見ていいだろう。女優など著名人を起用した同社のテレビ広告を見かけた人は少なくないはずだ。
一方、サイト運営費や原稿制作費、手数料負担の科目も計上されているが、とりわけ提携代理店への手数料負担に注目したい。売上高に対する比率は1%を切っており、広告代理店への依存割合は高くないと見ていいだろう。
つまり、同社の収入源である求人広告掲載料の獲得は、主に自社で手がけているということ。事実、16年度は350人を超す新卒社員を採用したことで、全社員はおよそ1,000人から1,340人に増加。営業拠点を5拠点新設して32拠点体制を構築するなど、営業体制を強化してきた。
ちなみに、ディップの売上高経常利益は、営業利益率と上回る水準での推移だ。受取利息や支払利息などを計上する「営業外収益―営業外費用」がプラスで推移しているということで、財務的にゆとりがあると見ていいだろう。