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中川政七商店・緒方さんと語る 実店舗を持つ企業のECの最適解とは

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モバイル時代における写真の強さを再認識
動画もすべて社内で制作する理由とは

川添(メガネスーパー) 緒方さんは現在、どのような取り組みに力を入れているのでしょうか。

緒方(中川政七商店) 情報受発信の手段としてSNSが当たり前になって久しいですが、最近、写真の重要さを改めて感じています。スマートフォン時代において、画面を覆い尽くす写真の影響力は非常に大きく、お客様に対するメッセージングは、すべて写真起点で考えるべきなのではと思うほどです。というわけで、出来上がったサンプルを見てから「どういう写真を撮って訴求しようか」という状態を改め、商品開発の段階から写真映えを見越して企画を進める体制にしたいなと思い、マーケティングのチームも初期の段階から商品企画プロジェクトに入る体制にしました。

これは、あらゆる自社媒体における訴求力向上、ECでのCV率向上のためということでもありますが、より重要なのは店頭接客の補助として活用するということです。たとえば鍋などは、店頭においてはサラで置いてある状態で販売するため、実際にその場で調理して良さを伝えるのは原則不可能です。そこで、ウェブサイトにその調理の様子を収めた写真や動画を置いておくことで、より直感的に「おいしそう!」と思ってもらい、接客のクロージングに活用するということです。

また、当社がオウンドメディアとして運営している「さんち~工芸と探訪~」というサイトで使われている写真も、ほとんど社員が自ら撮影しています。この商品の良さをいちばん知っているのは我々ですから、その良さを十二分に伝えるために「どう表現するか」を試行錯誤してレベルアップしようと。定期的にプロのカメラマンに来ていただき、撮影講座なども開催しています。

加えて、動画のノウハウづくりも頑張っているところです。iPhoneで撮影してアプリで編集するレベルからはじめましたが、徐々に進化してます。最近では、社内で制作した料理動画がFacebookで4,000いいね!を獲得したこともあります。やはり我々が売っているのは「モノ」ではなく「コト」なのだと再確認しました。

川添 すべて中の人が担当しているというのは素晴らしいですね。

緒方 やがて外部のパートナーにいろいろとお願いすることになっても、自分たちが確固たるノウハウを持つべきだろうと思っているんです。何もわかっていないのに、外の人に指示を出せるわけがない。自分たちも十分に理解してからでないと。

川添 お客様が知りたいことをいかにきちんと伝えていくか、そのためのコンテンツをいかに自社で作るかというのはすごく大事だと思います。写真や動画は、撮った人が対象物を好きかどうかが伝わりますよね。好きな人が撮ると、いい意味で「意志」が反映されて、写真や動画から空気感みたいなものまで伝わってきます。好きではない人、外部の人が撮影したものは、いくら上手でも見ている人には意外と伝わります。

とくに、今後は企業にひとりは動画の担当者が必要だと思っています。データやログの取得、配信方法など、デジタルマーケティングの技術はどんどん進んでいますが、肝心の撮影ができる人が少ない。ある程度の腕があり、しかもそれをちゃんと伝えられる人。外部を使ったとしても明確な「意志」を込められる人。その会社の文化や強みを理解していて、こうした方が絶対に伝わるという信念を持っている人は本当に少ないし貴重ですよね。

緒方 おっしゃるとおりです。空気感や意思をコンテンツに落とし込むことのレベルアップに精進していきたいです。そして、そうした表現が自らできる・ディレクションできる人間を「社内の貴重な人材」という状態から「チームみんなができる」ようにまで持っていきたいと思っています。

川添 小売業全体的が右肩上がりに伸びているとは言えない昨今、みんなついつい目先の売上に目が行きがちです。もちろんそれは大前提なのですが、一方で自分たちの魂を売らないというか、売上が上がるからといってそれはやってはまずい、というラインを守るのも重要です。それこそが企業のカルチャーであり、アイデンティティなのではないでしょうか。中川政七商店の13代目社長はそのあたりをすごくよく理解されているというか、老舗の良さと新しさをうまく融合させていらっしゃるなと感じました。(了)

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