単に接点を増やすだけではない“ある工夫”で配信許諾数・満足度どちらも増加傾向に
プッシュ通知の増加と顧客エンゲージメントの向上は両立できるのか。この問いの答えを導き出すため、ゴールドウインは2025年に入ってからプッシュ通知の配信数を1.8倍に増やしている。
「これによって突出して増えたのが、ニュース特集のPVです。プッシュ通知の配信数が1.8倍であるのに対し、ニュース特集のPVは2.6倍に増えています」(メグリ・鯨岡氏)
アプリデータの分析を行ったメグリは、プッシュ配信増による“痛み”が生じていないか確認するため、配信許諾率の推移や満足度にも目を向けた。すると、配信許諾率はやや微増、満足率の平均スコアは前年比で10ポイント増加し、情報提供数が増えたことによるプラス効果のほうが大きいとわかったという。
「アプリをダウンロードするほどブランドのファンであるお客様からすると、コンテンツの更新に気づけたり、新商品の見逃しが減ったりと、プッシュ通知によってご満足いただける要素のほうが大きい様子がうかがえました。裏を返すと、取り組みを行う以前は十分な発信ができていなかったのかもしれません。
今回の施策では、全員に対してプッシュ通知数を増やしたわけではなく、適切なセグメントを施しています。『プッシュ通知は嫌われる』という先入観にとらわれていましたが、配信内容やターゲットをきちんとコントロールすれば総量を増やしても問題ないとわかったのは、非常に大きな発見です」(ゴールドウイン・都地氏)
アプリ→ECサイト送客も右肩上がり ゴールドウインが取り入れたある店舗アプローチとは
THE NORTH FACEアプリでは、プッシュ通知による接触頻度を増やしてファンのニーズに応えられるとわかったが、アプリ展開をする小売企業にとって最も気がかりなのは「売上に直結するか」だろう。都地氏は、アプリがECサイトにもたらした変化を次のように述べた。
「アプリからECサイトへの送客は前年比118%、アプリ経由のEC売上は113%と増加しました。この数字の背景には、新規アプリユーザーの増加があります。アプリ会員数は前年から27%増加していますが、この動きをけん引しているのは、店舗スタッフです。
当社では店舗スタッフがアプリ顧客獲得数の目標値をもち、積極的に送客施策を行っています。レジ横に二次元コードを設置するだけでなく、接客時のご案内を容易にするNFCカードや紙のカードを発行し、購入に至らなかったお客様ともアプリダウンロードへの接点を作れるようにしました」(ゴールドウイン・都地氏)
「メグリでは、あらゆるブランド様からお話を聞きますが、やはり店舗スタッフからの推奨は大きな効果がありますよね。お会計時のアプローチは定番化していますが、一歩手前の接客時点のお客様にまで範囲を広げているのは、ゴールドウイン様ならではの工夫だと思います。タッチするだけでアプリのダウンロードページに遷移できるNFCカードは、ぜひ皆様にも体感してみてほしいです」(メグリ・鯨岡氏)

