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【リアル×オンラインのハイブリッド開催】ECzine Day 2025 October (2025.10.9)

ECzine Day 2025 October レポート(AD)

プッシュ通知増でも嫌われないアプリ運用の秘策は? ゴールドウインがLTV増につながった実践結果を共有

 今やアパレル・小売のメジャーな顧客接点の一つとなっているスマートフォンアプリ。顧客との距離を縮めるため、各社が個性ある取り組みを進めているが、「そもそもどんなアプローチをすべきか」「どういったコンテンツが求められるのか」「プッシュ通知の適正回数は?」といった疑問を抱きながら日々改善を行っている人も多いのではないだろうか。2025年10月9日に開催された「ECzine Day 2025 October」では、こうした問いの答えを自ら実証した株式会社ゴールドウインの事例が紹介された。本稿では、同社の販売本部 EC販売部 エキスパート 都地大基氏と、施策を支援したメグリ株式会社 マーケティング・セールス部 マーケティングマネージャー 鯨岡務氏による対談の様子をお届けする。

プッシュ通知を増やす=離脱につながるのか? 疑問に正面から向き合ったTHE NORTH FACE

 アウトドアブランド「THE NORTH FACE」や「Goldwin」を展開するゴールドウイン。日本国内外で展開する直営店や自社EC「Goldwin Online Store」、ブランドアプリなど、あらゆる顧客接点を有する一方で、顧客に情報を届けたいと考える関係者の多さゆえの“ある課題”を抱えていたと都地氏は振り返る。

「特にTHE NORTH FACEはブランド規模が大きく、ブランド事業部、EC部門、直営店部門と社内の関係者が非常に多く存在します。当時は、関係各所がどう協業して一貫したメッセージを配信していくか、コミュニケーション戦略に対する課題を抱いていました」(ゴールドウイン・都地氏)

株式会社ゴールドウイン 販売本部 EC販売部 エキスパート 都地大基氏
株式会社ゴールドウイン 販売本部 EC販売部 エキスパート 都地大基氏

 特に顕著だったのが、THE NORTH FACEアプリにおけるプッシュ通知の活用だ。顧客に伝えたい情報は数多くあれども、「アプリのプッシュ通知数を増やしすぎると、通知拒否どころかアプリのアンインストールにつながってしまう」といった業界の通説から、配信数や内容の精査をしなければならず、「その判断がなかなか難しかった」と語る都地氏。

 しかし、新商品やコラボレーション商品の販売情報、店舗でのイベント開催告知、特集コンテンツなど、ブランドの魅力を多面的に伝えるコンテンツは日々生み出されている。こうした豊富な情報資産が、固定観念によって顧客に届けられることなく埋もれてしまうのは、大きな機会損失であると考えた都地氏は、メグリと手を組んである仮説実証を行うことにした。

「私たちは、『ブランドの熱心なファンにとっては、情報が多すぎることよりも、価値ある情報を見逃すほうがマイナスな体験になるのではないか』と考えました。魅力あるコンテンツを適切な対象者に届けられれば、配信数を増やしても満足度は低下せず、通知拒否やアプリからの離脱も防げるはずと仮説を立て、検証をしてみたのです」(ゴールドウイン・都地氏)

単に接点を増やすだけではない“ある工夫”で配信許諾数・満足度どちらも増加傾向に

 プッシュ通知の増加と顧客エンゲージメントの向上は両立できるのか。この問いの答えを導き出すため、ゴールドウインは2025年に入ってからプッシュ通知の配信数を1.8倍に増やしている。

「これによって突出して増えたのが、ニュース特集のPVです。プッシュ通知の配信数が1.8倍であるのに対し、ニュース特集のPVは2.6倍に増えています」(メグリ・鯨岡氏)

メグリ株式会社 マーケティング・セールス部 マーケティングマネージャー 鯨岡務氏
メグリ株式会社 マーケティング・セールス部 マーケティングマネージャー 鯨岡務氏

 アプリデータの分析を行ったメグリは、プッシュ配信増による“痛み”が生じていないか確認するため、配信許諾率の推移や満足度にも目を向けた。すると、配信許諾率はやや微増、満足率の平均スコアは前年比で10ポイント増加し、情報提供数が増えたことによるプラス効果のほうが大きいとわかったという。

配信許諾率の推移
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ユーザーアンケートにおける満足度
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「アプリをダウンロードするほどブランドのファンであるお客様からすると、コンテンツの更新に気づけたり、新商品の見逃しが減ったりと、プッシュ通知によってご満足いただける要素のほうが大きい様子がうかがえました。裏を返すと、取り組みを行う以前は十分な発信ができていなかったのかもしれません。

 今回の施策では、全員に対してプッシュ通知数を増やしたわけではなく、適切なセグメントを施しています。『プッシュ通知は嫌われる』という先入観にとらわれていましたが、配信内容やターゲットをきちんとコントロールすれば総量を増やしても問題ないとわかったのは、非常に大きな発見です」(ゴールドウイン・都地氏)

アプリ→ECサイト送客も右肩上がり ゴールドウインが取り入れたある店舗アプローチとは

 THE NORTH FACEアプリでは、プッシュ通知による接触頻度を増やしてファンのニーズに応えられるとわかったが、アプリ展開をする小売企業にとって最も気がかりなのは「売上に直結するか」だろう。都地氏は、アプリがECサイトにもたらした変化を次のように述べた。

アプリからECサイトへの送客は前年比118%、アプリ経由のEC売上は113%と増加しました。この数字の背景には、新規アプリユーザーの増加があります。アプリ会員数は前年から27%増加していますが、この動きをけん引しているのは、店舗スタッフです。

 当社では店舗スタッフがアプリ顧客獲得数の目標値をもち、積極的に送客施策を行っています。レジ横に二次元コードを設置するだけでなく、接客時のご案内を容易にするNFCカードや紙のカードを発行し、購入に至らなかったお客様ともアプリダウンロードへの接点を作れるようにしました」(ゴールドウイン・都地氏)

「メグリでは、あらゆるブランド様からお話を聞きますが、やはり店舗スタッフからの推奨は大きな効果がありますよね。お会計時のアプローチは定番化していますが、一歩手前の接客時点のお客様にまで範囲を広げているのは、ゴールドウイン様ならではの工夫だと思います。タッチするだけでアプリのダウンロードページに遷移できるNFCカードは、ぜひ皆様にも体感してみてほしいです」(メグリ・鯨岡氏)

LTVは2.72倍に アプリはOMO利用促進の最短ルート

 ゴールドウインとメグリは、アプリが売上に与える効果をさらに可視化すべく、アプリ会員と非アプリ会員のアクティブ度合いに目を向けた。すると、2025年9月までの実績値でアプリ会員の平均購入単価は1.13倍、平均購入頻度は1.06倍、LTVは1.19倍と、いずれも非アプリ会員より良い結果が見られたという。

「コラボや限定商品など、単価が高くかつニュース性のある販売情報をプッシュ通知で提供しているのが、こうした結果につながっていると考えています」(ゴールドウイン・都地氏)

 また、アプリ利用の有無とチャネル利用動向をかけ合わせた数値にも注目したい。アプリ会員かつ店舗・EC双方で購入するOMO顧客のLTVは2.72倍と最も高く、継続的なつながりを生む上でのアプリ活用の有効性がうかがえる結果となった。

アプリが売上向上に果たす役割 OMOのうち、アプリ会員かどうかで比較
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「店舗体験の良さを生かしながらも、売上やLTVの最大化を図る上でOMO推進は非常に大事だとわかりました。会員のOMO化に向けては、現在店舗のみで購入されているお客様へECサイトで店舗在庫確認や購入商品のリペア申し込みができる点、EC別注商品の存在や送料無料などの利便性を訴求するなどして、アプローチを強化しています」(ゴールドウイン・都地氏)

「MGRe」でプッシュ通知→EC送客最大化を容易に実現

 THE NORTH FACEアプリが、適正なプッシュ通知増を実現できた背景には、メグリが提供するアプリマーケティングプラットフォーム「MGRe」の存在がある。MGReでは、ユーザー属性から絞り込んだ配信を実現できる「セグメントプッシュ」や会員ID単位で指定した「会員IDセグメントプッシュ」、外部システムから抽出したCSVデータを用いた「外部連携オートプッシュ」など、情報伝達の最適化を図れる機能が多数搭載されている。

「THE NORTH FACEアプリではこれらに加え、カセットレイアウト機能も有効活用いただいています。同機能は、アプリのネイティブ画面の配置を容易に変えられるもので、ゴールドウイン様はプッシュ通知から遷移するコンテンツの最適化なども行われていました。アプリからのEC送客が前年比118%と良い結果を残したのも、こうした改善による成果だととらえています」(メグリ・鯨岡氏)

カセットレイアウト機能によりECコンバージョンアップ
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 業界の定説に疑いの目を向け、自社の“正解”を自ら探りに行ったゴールドウイン。その成功の裏には、量と精度の向上があったことを忘れてはならない。

「THE NORTH FACEでは、単に商品を販売するだけでなくイベントも重視しています。商品購入とイベント参加どちらもされているお客様のロイヤリティは非常に高いという結果も出ているため、今後は『モノ(商品)』と『コト(体験)』をつなげたセグメント配信やプッシュ通知を目指しています

 アプリがあることで、こうしたコミュニケーションが円滑になったことは間違いありません。ブランドのファンであるお客様がよりアウトドアやスポーツを楽しめるよう、世界観を伝えながら“ガイド”としての役割も果たしていけたらと考えています」(ゴールドウイン・都地氏)

現状のアプリに課題を感じている方は必見!

 メグリは、アプリを通じて「顧客とのつながり」を深めるマーケティングプラットフォームです。会員情報の統合管理、行動データの可視化、プッシュ通知やクーポン配信など多彩な施策をワンストップで実現。店舗とECを横断したOMO施策を支援します。詳細はMGRe公式サイトよりご確認ください。

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提供:メグリ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/17565 2025/12/01 11:00

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